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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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暗躍⑬

「ふははははは!! 愚か者が!! 人間ごときが神に勝てるわけなかろうが!!」


 魔法陣の中に引き込まれたシルヴィスにソールは嘲りの言葉を叩きつける。その嘲りに呼応するように魔法陣の発する色が青く変わっていく。


 バシュゥ!!


 しばらく青く発光していた魔法陣から一つの物体が放り出された。十メートルほどの高さまで打ち上げられた物体が地上に落ちるとそこには、焼け焦げた物体が転がっていた。


「おい」

「はっ!!」


 ソールの声にどこからともなく数十人の黒装束が現れた。


「死体を調べろ」


 ソールの命令を受けた黒装束が四体、転がっている物体に向かっていく。


「ソール様、雷獄封魔(エルテンガンス)の効果は凄まじいものですな」

「ふ、このソールが考案した特別な術式だ。人間ごときではどうしようもあるまい」

「感服致しました」

「人間程度がこの陣の中に引き摺り込まれればこの様だが、キラトならば命を失わずに脱出できるかもしれんな」

「なんと……剣帝キラトとはそれほどまでの力を……」

「ああ、油断はできぬが雷獄封魔(エルテンガンス)に閉じ込めれば少なくとも無傷ではいられまい」

「そこを……我々が」

「そういうことだ。手負いならばいかに剣帝キラトといえども楽に討ち取れよう」

「御意」


 ソールの言葉に黒装束が一礼する。


「ソール様、ミルケンはどうされたのです?」


 黒装束の問いかけにソールの顔が不愉快なものへと変わった。黒装束の男もまずいと思ったが、もはや取り消すことはできない。


「やつは殺された」

「なっ、スティルはそれほどの強さなのですか?」

「いや、ミルケンを斃したのは別の者だ」

「別の者でございますか?」

「そうだ。尋常ならざる手練れだ。アミュレス、お前であってもあの娘には歯が立たぬであろう」

(ソール様がそのように評するとは……)


 アミュレスはゴクリと喉を鳴らした。アミュレスから見ればソールはまさに上位者そのものであるのだが、ソールが明らかにその娘に対して恐怖を持っている事を察したのだ。


「だが、そいつがキラト……いや、違うな。八戦神(オクトゼルス)を斃した者の一人か」

「ソール様?」

「アミュレス、すぐに陣を隠せ!! 雷獄封魔(エルテンガンス)は我らの切り札だ」

「はっ!!」


 アミュレスは即座にソールの命令を実行に移す。ソールの声が尋常でない気迫に満ちており、まさに決戦の雰囲気を察したからだ。


「いやいや、隠さないでくれ。ヴェルティアなら普通に引っかかりそうだからな」


 そこに妙に軽い調子の声がソール逹の耳に届いた。


「な……なんで?」

「貴様……どうやって?」


 黒装束逹達の声がわずかに震えている。震えるのも無理はない。そこにはたった今死亡を確認しているはずのシルヴィスが立っていたからだ。


「貴様、どうやって雷獄封魔(エルテンガンス)から脱出した!?」


 ソールの声にも動揺があった。雷獄封魔(エルテンガンス)に引き摺り込まれれば無傷でいられるはずはないからだ。


「いや、脱出も何も俺()その陣の中に捕われてないからな」

「そんなはずはない!! 確かにその陣に引き摺り込んだ!! あれは幻術などではない!!」


 ソールの動揺は一気に大きくなっていく。シルヴィスを引き摺り込んだのは確実であり、術者であるソールは雷獄封魔(エルテンガンス)がどのような状況なのかは手にと取るように感じることができる。


「ああ、あれかこういうことだよ」


 シルヴィスがニヤリと嗤いながら指をパチンと鳴らすと雷獄封魔(エルテンガンス)から放り出された死体から黒い靄が剥がれると中からズタボロになった黒装束が現れた。


「な……」

「ま、まさか……」


 死体を確認していた黒装束から困惑の声が発せられた。


「ああ、ガルエルム卿の暗殺の実行犯の一体だ。見覚えあるだろう?」

「そうか……貴様、雷獄封魔(エルテンガンス)に捕われた時に私の部下と入れ替わったのだな」

「何を俺は賢いだろという空気を醸し出してるんだ。とっくに答えを示してるんだからわからない方がおかしいだろ」


 シルヴィスのため息混じりの返答にソールは怒りを浮かべた。


「まぁ、エルガルド帝国のやつも驚いていたからこの世界では入れ替わるという方法はあまりしないのかもな」

「く……」

「さて、ここで一つ問いだ。なぜ俺はこのタイミングで出て来たと思う?」

「何?」

「もし、俺が勝てないと結論づければ逃げるはずだ。だが、ここに出てきたということは勝てるという確信ができた。もしくは出てくる理由ができたということだろ?それは何だという問いだ」

「……勝てるだと?」

「お前がさっき(・・・)自分で言っただろ。それで俺は隠れる必要がなくなったというわけだ」


 シルヴィスの言葉にソール達はごクリと喉を鳴らした。


「こういう事だよ」


 シルヴィスはニヤリと嗤うと同時に天空に魔法陣が描き出されると魔法陣から巨大な岩石が現れた。その大きさは貴族の屋敷ほどもあるほどのものだ。


「あ……あ」


 現れた巨大な岩石がそのまま落ちてくる光景に黒装束達は動くことができないでいた。あまりにも現実離れした光景に思考が停止してしまったのだ。


 ズズゥゥゥゥ……ン!!


 巨石が雷獄封魔(エルテンガンス)と共に死体を確認していた黒装束達を押しつぶした。


「さて、これで切り札(・・・)は潰した。そして、ここにいるクズ共を皆殺しにすればこれでこの件は終わりだ。そう判断したから出てきたとそういうわけだよ」

「き、貴様……」

「うん、岩禅(がんぜん)ってやっぱり強力だよな。おかしいのはやっぱりあいつだよな」


 シルヴィスのぼやきにも似た言葉に訝しんだソール達だが、それが単なるぼやきでなかった事が次の瞬間にわかった。


「だからコブが出来たっていったじゃないですか!! あんな術を躊躇いなく行えるのはシルヴィスぐらいです!!」


 ヴェルティアの明るい声が緊張した場に鳴り響いた。


「何とか間に合ったな」

「おっ来たか。もう下準備は終えてる。最終幕をあげていいか?」

「もちろんだ」


 キラトの自信に満ちた声がソール達にはとてつもなく危険なものに感じられた。

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