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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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暗躍⑪

「 キラトさん逹がこっちに向かってきてますね。ディアーネ、スティルさんの様子はどうですか?」

「大丈夫です。すでに意識も戻りました」

「良かったですねぇ。ジュリナさんとムルバイズさんが悲しむところでしたものね」

「はい。それでソールを我々(・・)は追わないのですか?」

「いえ、追いますよ。でもキラトさん逹と合流してからです」

「わかりました」


 ディアーネが静かに言うとここに向かってくるキラト逹の気配が強くなった。


「あれ?もう終わったのか?」


 キラトの問いかけにヴェルティアは首を横に振った。


「いえ、 暗殺者の首魁は逃げました。既にシルヴィスが追ってますけど相手は神なので何かしらの特殊能力があるかもしれません」

「そうか。スティル!!」


 ヴェルティアの言葉を聞きキラトが頷いたが、ディアーネの手当てを受けているのがスティルであることに気づいたキラトが驚きの声を上げる。


「王太子殿下……面目次第もございません」


 スティルが恥入りながらキラトに謝罪を行う。第四軍団長として襲撃者にやられると言うのは失態以外の何ものでもないのだ。


「いや、相手は神族という話だ。それにヴェルティアさんは“ソール”と言った。スティルを襲ったのがソールであるというのなら命があっただけでも幸運だ」

「はっ」

「ここらに転がっているのは……ヴェルティアさん逹が?」


 キラトは周囲に倒れ込んでいる黒装束逹を見渡しながら言うとヴェルティアは首を静かに横に振った。


「いえ、私が斃したのはそこに斃れている神様ですよ。他はスティルさんが倒していました」

「そうか、それにしてもヴェルティアさん逹はどうしてスティルが襲われているところに?」


 キラトの問いかけにスティルも頷いた。戦いというシビアな現場で命を張っている者逹にとって、絶体絶命の危機に助けが来るなどという偶然を信じていないのだ。


「実は私たちが王都の様子を見ようと街に繰り出したんです。食事を終えたところで、殺気を感じたんですよ。それで現場に駆けつけるとこの黒装束逹が別の方々を襲っていたんです」

「別の?」

「はい……軍規相ガルエルムさんです」

「なっ!! ガルエルムが襲われた!! それでガルエルムは!?」


 キラトの問いかけにヴェルティアは静かに首を横に振った。ヴェルティアの仕草からガルエルムが暗殺されたことを察するには十分であった。


「……そうか」

「黒装束を逃さないために結界を張るのに時間をかけてしまい。治癒が遅れたことをお詫びします」


 ヴェルティアの謝罪にキラトは静かに首を横に振った。


「いや、ヴェルティアさん逹に何の責任もない。責任を取らせるのはこいつらだ」


 キラトは黒装束逹に冷たい視線を向けて言い放った。シルヴィス逹は現場に急行して実行犯逹を捕まえてくれただけでも十分すぎるほどの功績だ。守れなかったのは残念だが、それを責めるのは明らかに筋違いというものだ。


「ガルエルムさんは若い官僚さんを守るように覆いかぶさっていました」

「そうか……ガルエルムらしいな。次代を守ろうとしたわけか」

「ええ、私達が見た時にはガルエルムさんに黒装束逹が剣を何度も突き立てていました」

「……」


 キラトは怒りの表情を浮かべた。若者を庇う年長者に何度も剣を突き立てるなどキラトの美学の対極に位置する行為だ。


「お父さん!!」

「ジュリナ!!」


 そこにジュリナがスティルに声をかけてきた。


「お父さん、大丈夫?」

「ああ、この方達が助けてくれた」


 スティルがヴェルティア逹を見ていうと、ジュリナは深々と頭を下げた。


「ありがとうございます!! 何とお礼を言って良いか」

「はっはっはっ!! 気にしないでください!! ジュリナさんのお父様が狙われてると黒装束逹の口から聞きましたのです!! 友人の家族を助けるのは当然なのです!!」


 ヴェルティアの明朗な返答に全員が顔を綻ばせた。このような状況にあってヴェルティアの天真爛漫さは鬱積した空気を破壊するのだ。


「ジュリナ、親父は?」

「爺様は家でお婆さまとお母様を守ってるわ」

「そうか」


 ジュリナの返答にスティルは安心したように頷いた。自分が狙われたように家族を狙われた可能性も考えていたからだ。スティルは軍の最高幹部に近い立場ではあるが、貴族として爵位を持っていないので家に護衛を独自に雇っているわけではないのだ。


「ヴェルティアさん、さっきスティルが狙われていたことを黒装束が吐いたという話だけど、ソールはガルエルムとスティル以外の誰を狙っている?」

「キラトさんです」

「……やはりか」

「というよりもガルエルムさんとスティルさんを狙ったのは軍を混乱させるというのもあるのでしょうけど、血縁者がキラトさんの関係者だからです。つまり、狙われているのはキラトさんなんですよ」

「俺の性格を考えれば……犯人を自ら追う。そしてノコノコと現れたところを殺すという計画か」


 キラトは話を進めるごとに怒りのボルテージが上がっていっているようであった。


「キラト、気持ちはわかるけど冷静になって」

「リネア、お前こそ怒りが増してきてるぞ」

「私はいいのよ。うちの人を殺そうとしてるだけで許せないし、軍規相とスティルさんを誘き出すために襲うなんて……この手で射殺してやらないと気が済まないわ」

「う〜ん、二人とも少々過激ですけどお互いに深い繋がりますねぇ〜」

「ふふ、ヴェルティアさんも結婚すれば気持ちがわかるわ」


 リネアはそう言ってヴェルティアに片目を瞑った。美人のリネアがやると非常に絵になるというものであった。


「みなさん!!」


 そこにリューべが駆けてきた。


「リューべ、来たか」

「はっ!! 遅れて申し訳ございません」

「気にするな。ガルエルムの屋敷が一番ここから遠い。遅れるのは仕方がない」


 キラトの言葉にリューべは恥じ入った。


「リューべ、落ち着いて聞いてくれ。軍規相ガルエルムが殺された」

「な、何ですと?」

「ガルエルムは刺客の手にかかり殺された。俺はこれから首謀者を追う。既にシルヴィスが先行している。シルヴィスの実力を考えれば大丈夫と思うがこれから助けに行く」

「承知しました」

「ジュリナはスティルと共に家に戻れ。スティルは現行戦えるだろうが、それでも家族に無事な姿を見せてやれ。これは命令だ。命令違反は許さん」

「わ、わかりました」


 ジュリナはキラトの強い口調に素直に従った。ジュリナが来ないのは戦力ダウンで問題なのだが、本調子でないスティルを連れて行くことは出来ないし、この場に怪我人を置いていくことはできない。


「さて、話がまとまったところでシルヴィスを追いましょう。ソールさんに報いをくれてやらねばなりませんからね」


 ヴェルティアの言葉に全員が頷いた所でシルヴィスを追うために動き出そうとした所で声をかけるものがいた。


「申し訳ございません。ユリ」

「ああ」


 ユリが魔法陣を展開すると魔法陣から魔力で形成された鎖が飛び出すと倒れている黒装束逹を拘束した。


「この者達をここに残していくわけにはいきませんので、お時間を取らせて申し訳ございません」

「あ〜確かにそうですね。ディアーネは優しいですねぇ〜とどめを刺すという選択肢をとらなかっただけで偉いです!!」

「ありがとうございます……シルヴィス様なら何か活用するかもしれないと思いましたので」

「なるほど極悪なシルヴィスならこの黒装束をうまく活用するかもしれませんね」


 ヴェルティアはうんうんと頷くとキラト逹へと視線を移した。


「よし、行こう」


 キラトはそういうとシルヴィスの気配を追い、ヴェルティア逹もキラトを追って走り出した。


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