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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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暗躍②

「ん?」


 ガルエルムの訝しがる声にレーザンが怪訝な表情を浮かべた。


「軍規相?」


 レーザンの声にも緊張が含まれた。レーザンもまた只事でない雰囲気を感じたのだ。


「軍規相……まさか王都でこのような」

「油断であったな。まさか陛下のお膝元でこのような蛮行に及ぼうとするものがいるとは思わなんだよ」

「く……何ということだ」


 レーザンの声に苦いものが混ざる。王都の治安は良いため軍規相のような国家の重鎮であっても最低限の護衛しか付けていないのだ。


『何者だ!!』


 馬車の外で護衛が怒鳴る言葉が聞こえる。このような街中で護衛が声を荒げるのは威嚇だけが目的ではなく、周囲に緊急事態を伝えるのも兼ねているのだ。


「来たか……レーザンよお主はすぐにここから逃げよ」


 ガルエルムの言葉にレーザンは驚きの表情を浮かべた。


「それは聞けません!! むしろ軍規相こそ逃げていただきたい!!」

「それは聞けんな。儂よりもお主が生き残るべきだ」

「それならば双方生き残ることに知恵を絞るとしましょう」


 レーザンの言葉にガルエルムは苦笑を浮かべた。この王都で軍規相暗殺に臨むような相手が並の力量のはずがない。


「レーザンの言う通りだな。生き残ることを優先せねばな」


 ガルエルムの言葉にレーザンは大きく頷いた。


(何としても軍規相をお守りせねば。ここで私の命が尽きようとも……)


 レーざんは心の中でそう決意をした。国家のためを考えるのならば自分よりもガルエルムを優先するのは当然であると考えたのだ。


『貴様ら!!』

『おのれぇぇ!!』


 馬車の外では戦いが既に始まっている。剣戟の音と怒号が周囲に響き渡った。


『ぐわっ!!』

『く……こいつら強いぞ!!』


 バタン!!


 馬車の扉が開き、護衛が切羽詰まった顔で二人に声をかけた。


「軍規相!! 危険です!! ここから離れてください!!」

「分かった!!」


 護衛の言葉にガルエルムは即座に返答する。ガルエルムは軍行政の専門家ではあるが、戦闘の専門家ではない。ガルエルムは自分の専門外のことには極力口を出すことはない。「プロに良い仕事をさせたければ素人は口を出すべきではない」と言うのがガルエルムの哲学でもあるのだ。


「いくぞ!!レーザン!!」

「はい!!」


 ガルエルムの言葉にレーザンは即答すると馬車の外に出た。


 周囲では護衛と襲撃者達の間で激しい戦いが行われていた。戦況は護衛達の方が明らかに押されている。


 黒装束に身を包んだ襲撃者達は統率の取れた連携で護衛達と一対一で戦うことはせずに常に多対一の状況で戦っている。そして護衛よりも確実に数が多いのだ。


(やはり逃げ切るのは厳しいかもしれんな……儂の命で皆を見逃すような連中には思えん……それにこの気配は天界の者共か)


 ガルエルムは黒装束の者達の気配が天界の者であることに気づいた。


「いたぞ!! ガルエルムだ!!」

「確実に仕留めろ!!」


 黒装束のもの達がガルエルムという獲物を見つけると一斉に襲いかかってきた。護衛達は数の多い黒装束の全てを防ぐことはできない。馬車の中に立てこもっても守り切ることはできないし、救援が来るまで持ち堪えることはできないという判断ゆえにガルエルム達を逃がそうと考えたが、それは悪手だったかもしれない。


「行ってください!!」


 馬車の扉を開けた護衛が黒装束達を食い止めるために立ちはだかった。


「はっ、魔族ごときが!!」


 黒装束たちが嘲笑しながら護衛に襲いかかった。


「ウォォォォォォ!!」


 護衛と黒装束が激しい戦いに入る。数に勝る黒装束達が圧倒的に有利であるが、護衛は最後の砦であると理解しているために多少切りつけられたところで怯むことなく黒装束達と戦いを続けていた。


「軍規相!!」


 そこにレーザンの悲痛な声が響く。


 回り込んだ黒装束の一団がガルエルムに刃を突き立てようとしたところでレーザンがガルエルムを押すとガルエルムは間一髪で黒装束の剣が外れた。


「無駄な足掻きを!!」


 黒装束が怒りの声を上げてレーザンに刃を振るう。レーザンは肩からザックリと切られると血を撒き散らしながらその場に倒れ込んだ。


「ふん」


 レーザンを切り伏せた黒装束は忌々しそうにガルエルムを殺すために振り返った。

 しかし、踏み出そうとしたところでレーザンの右手が足首を掴んだ。


「ふざけるなよ!! ゴミが!!」


 黒装束の男は激昂しレーザンに刃を突き立てようと剣を逆手に持つとレーザンの背中に目がけて突き立てようとした。


「やめろ!!」


 ガルエルムは黒装束の男に背後からぶつかった。


 黒装束の男は大きくよろめくとつんのめって転んでしまう。


「はっバカが!!」


 黒装束は立ち上がるとガルエルムの胸に剣を突き立てる。


「ぐぅ……」


 胸を貫かれたガルエルムはその場に崩れ落ちた。


「はっ調子に乗るからだ!!」


 突き飛ばされた黒装束の男は嘲るような声を上げた。自分が絶対的な強者になっていると考えているためにガルエルム達を見下しているのだ。


「さぁて、お前が守ろうとしたこいつを殺してやるか。お前がいかに無駄なことをしたかを思い知って死ね」

「閣下ァァァ!!」


 レーザンの悲痛な叫びが響いた。


「うるさいよ。お前は先にあの世でガルエルムを待ってろよ」

「くそ……」


 黒装束の男がいやらしい嗤いを浮かべたところで再びレーザンへ剣を突き立てようとした。


「させぬ!!」


 ガルエルムが動きレーザンへと覆いかぶさった。そこに黒装束の刃が突き立てられた。


「閣下!!」

「ぐ……任せておけ」

「はっ、下等な魔族は本当に頭が悪いなァァァ!! みなお前を生かすために戦っていたのに無駄にしおって!!」


 黒装束の言っていることはある面で言えば正しいのだろう。護衛やレーザンの気持ちを汲めば当然、ガルエルムは逃げるべきであった。だが、ガルエルムはそれを選択することができなかったのだ。

 次代を担う若者を守るのは年長者の役目であると考えたのだ。それはガルエルムにとって譲ることのできない矜持であったのだ。


 ザクッ!! ザクッ!!


 続けて剣をガルエルムへと突き立てていく。その度にガルエルムの顔が苦痛に歪むのをレーザンは見た。


「閣下!! 退いてください……」

「ふ、まだまだ……これからよ」


 ガルエルムの口から大量の血が溢れ出てきた。


「何やってる? そんなジジイなんぞさっさと殺せ。すぐに魔族が来る


 声をかけてきた黒装束の言葉は最後まで発せられなかった。いきなり頭部が爆ぜたからだ。


「な……」


 あまりにも非現実的な光景に黒装束達は声を発することができなかった。


「ゲス神達の下僕どもか。皆殺しにしてやる」

「何というかどんどん神のレベルが下がっていってますねぇ〜」


 そこにはシルヴィスとヴェルティア、一歩控えてディアーネとユリという神達の天敵が怒りと侮蔑の視線を黒装束達に向けていた。



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