もたらされた情報④
「さて、とりあえずの私が持っている神達で有益な情報はこれくらいかな」
ルキナはそう言ってニッコリと笑った。
「神達の関係がかなりわかりました。今回の情報を元に少し作戦を練ってみたいと思います」
「そうか。役立ててくれるとこちらも有利に物事をすすめることができる」
「はい。何とか頭を使ってみたいと思います」
「何か手が必要な事があったら言ってくれ」
「はい。よろしくお願いします」
シルヴィスはそう言って立ち上がるとルキナに向かって一礼する。ヴェルティア達もそれに倣って立ち上がるとそろえぞれ一礼する。
「それで、君達はこれからどうする? 望むなら城に部屋を用意するが?」
ルキナの申し出にシルヴィスは少しばかり思案顔を浮かべた。ルキナ達の厚意に甘えるという気持ちもあるが、王都の賑わいも経験してみたいという気持ちもある。
「う~ん、城の中も見応えあると思うのですけど……王都の様子も捨てがたいんですよねぇ~」
ヴェルティアがまさに究極の選択とばかりに唸り始めた。その様子は本当に悩んでいるようでルキナ達は微笑ましそうに見ている。
「ディアーネはどうですか?」
「そうですね……私は王都の様子を見たいというのが本音ですね」
「ユリは?」
「私はどちらかというと兵士達の使っている武器とか訓練内容に興味があるな。でも一応私はお嬢の護衛だから、お嬢の判断に任せたいと思う」
「なるほど……やはりユリは私のキラリと光る知性を高く評価しているというわけですね!! わかりました!! ここは私が決めて見せましょう!!」
「今日は王都の様子を見たいので、王都の方に宿を取らせてもらおうと思います」
ヴェルティアが満面の笑みを浮かべて
「ちょ、ちょっと!! シルヴィスはどうして私の意見を聞かないんですか!?」
「お前の事だからコインの裏表で決めようとしてるだろ?」
「そ……そんなことはないですよぉ~」
「わかりやすくテンションを下げるなよ。お前が神の小部屋からコインを取り出したからな。いくらなんでもここでコインを放り投げるような真似を許すわけにはいかんだろ」
「そうですね」
「確かに……」
シルヴィスの言葉にディアーネとユリは頷き、ルキナ達は苦笑いを浮かべていた。
「まぁ、それもそうですね。王様の前でコインを投げるような恥ずかしい真似をせずにすみましたね。アインゼス竜皇国の名誉は守られましたね!! シルヴィスの提案を即座に受け入れる私……すばらしですね!!」
「お前ちょっと黙ろうな」
ヴェルティアの前向きすぎる自己完結にシルヴィスは深入りを避ける。
「せっかくのご厚情ですが、今回は王都の様子が気になりますので今日は王都で宿を取りたいと思います」
「うん。わかったよ。もちろん、気が変わったらいつでも城に宿泊してくれても構わないよ」
「ありがとうございます」
「キラト達の今日はもう休みなさい。明日以降にエルガルド帝国関連の報告は聞くとしよう」
「ああ、わかった。言葉に甘えさせてもらうよ」
キラトはそう言ってニッコリと笑った。
「ムルバイズもジュリナも久々の王都だ。それにスティルも首を長くして待っているだろうな」
「承知いたしました。ご配慮感謝いたします」
「うむ。リューベも久しぶりに姉に会いに行くが良い。甥っ子も喜ぶだろう」
「は、はい!!」
ルキナに言われたリューベは即座に立ち上がり一礼した。
「ふふ、それでは今日はここまでにしよう。……そうだ」
ルキナはそういうと空間に手を突っ込むと四つの指輪を取り出すとシルヴィス達に渡した。
「これは?」
「その指輪を持つ者は王城に自由に入ることが出来る。門衛に見せればそれが通行証代わりになるし、王城に転移することも可能だ。王城は特別な呪法で張られた結界のために転移では入り込むことが出来ない。出来るとすれば私と同等の実力者くらいだ。それでも誰にも気づかれることなく入り込むことは出来ないけどね」
「ありがとうございます」
シルヴィス達は礼を言う。それほどの効力を持つ指輪をシルヴィス達に与えるのはそれだけシルヴィス達を信用しているという証拠である。それがわからないようなシルヴィス達ではない。
「それじゃあ、親父殿。今日は休ませてもらう」
キラトのこの言葉にルキナ以外が立ち上がると一礼すると部屋を出て行った。
「シルヴィス君……ヴェルティア嬢……一段階落ちるとはいえディアーネ嬢とユリ嬢……か。異世界からの来訪者はこの鬱積した世界をどうかき回してくれるのかな? ……コホ」
ルキナの口から小さな咳がこぼれた。
「この鬱積した世界……我らだけでは変える事は出来ない。彼らのようなイレギュラー的な存在が必要なのかも知れんな……これが最後の好機なのだろうな……コホコホ」
ルキナの口から小さな咳が続いていた。




