20. 無茶 と 無謀
ご飯を食べて休息を取った後、俺は狩り場へと来たが、そこで少し考えた。
ゴブリンとオークを1時間ずつ狩るとして、数はどうするべきか。
先ずはゴブリンだが、コボルトで2体イケたからゴブリンなんて一気に3体でも良いのではないか?
まぁ、とりあえず、3体から初めて、増やしていけば良いか?
と言う事で、石板でゴブリンを指定して、リポップ数を3、リポップ時間を5秒で設定。
設定後に広場の中心へとゴブリンが3体横並びで現れた。
俺は腰に刺している換装させたナイフをその内の1体へと投げつける。
俺の投げたナイフはサクッと簡単に真ん中のゴブリンへと刺さり、ゴブリンは突き刺さっているナイフを触りながら膝から崩れ落ちる。
ナイフを投げつけたと同時に右端のゴブリンへと右からフルスイングで薙刀を薙ぐ。
俺が薙いだ薙刀の刀身は、まるで、水に包丁を突き刺したかの様に斬っていると言う感触がないまま、ゴブリンの身体を上下に分けた。
俺のフルスイングは、その横で腹を抑えて膝立ちになっていたゴブリンの頭部を斬り捨てた。
手にしている薙刀は、まるで枝を振っている様に軽く、そのまま一番左のゴブリンをも切断した。
ゴブリン3体があっさりと俺に斬られたのを見た後に、ゴブリンの腹に刺さっているナイフをそのまま抜刀して電子レンジへと変えた。
ナイフから姿が変わった電子レンジは、そのまま扉を開いてゴブリン3体を吸い込んだ。
俺はサッと電子レンジを拾い上げ、ゴブリンの背後になる位置に立った後、自分の足元へと電子レンジを置いた。
そして俺は、このまま1時間、機械の様にゴブリンの処理をしたが、カンストさせるには少しばかり数が足りず、後30分ほど追加で薙刀をフルスイングした。
よし、大体こんなもんだろ?
ゴブリンを1時間半の時間をかけて狩った後、俺は休憩の為に10分休んだ。
流石に疲れが溜まって来ており、何時間もフルスイングしぱなっしの俺の腕は、いい感じでパンパンになっていた。
オークをの素材を集めたら、今日はもう飯くって寝るか……
って言うか、オークの大きさだったら、一振りで倒せるのは2体が限界か?
ぶっちゃけ、もう、一振りで倒さなくても良いんじゃねぇか?
流れ作業も飽きて来たし、最後くらいは戦う練習も兼ねて身体を動かしてみるか……
と言う事で、俺はオークを指定し、リポップ数を4、リポップタイムを3秒で設定する。
俺の設定と同時に、前に3体、後ろに1体のオークが現れた。
4体の並び順はやっぱり変わるか……
オークの出現位置を確認した俺は、石板の下に抜刀した電子レンジを設置した後にオークへと向かって突っ込んで行った。
これではどうだ!
「【鎌鼬】!」
俺は今まで使っていなかった薙刀のスキルを発現させた。
俺が薙刀を横に薙ぎながらスキルを発現させると、薙刀の刀身が振動し、刀身から薄らと見える透明な斬撃が飛び出た。
そして、その斬撃をまともに受けた3体のオークは、身体が上下に分かれ、後ろの1体へと深い傷を負わせた。
俺は再度、鎌鼬を発現させて、後ろの1体を斬り裂いた。
後ろの1体が切り裂かれると同時に、新たに3体のオークが出現した。
!?
一瞬、
出現するの早くね!?
と吃驚するが、自身でリポップタイムを3秒にしていたのを思い出した。
やってしまった!
こんなんじゃ休む暇ねぇじゃねえか!?
完璧にやってしまった感を出している俺は、連続して鎌鼬を発現させる。
スキルを使って分かった事は、鎌鼬のアクティブタイム内だったら何発でも斬撃を放つ事ができた。
そして、リキャストタイムの10秒は、何気に長く感じられた。
たかが10秒、されど10秒と言う命をかけている時の1秒1秒が重く、そして、大分長く感じられた。
リキャストタイム中の時間経過はどこにも現れず、自分で10秒を管理するしかなかった。
10秒間はスキル無しでそのまま薙刀でオークを斬った。
ナイフで戦った時はあんなに硬く感じたオークが、このカンストした薙刀で斬ると、ゴブリンの時の水を斬ったとまではいかないが、絹ごし豆腐を斬った感触に近かかった。
ぶっちゃけ、スキル使わなくてもなんとかなりそうだが、接近して1体ずつ狩るのは未だに怖い。
離れて狩れるんだったら、いちいち近づく必要なんてねぇだろ……
と言う事で、スキルが発動しない10秒間だけはオークに接近して戦った。
そんなこんなで1時間後、俺は満身創痍と言った状態で息を荒くしながら壁に背をもたれかけて座っていた。
って言うか、3秒はと言うのはマジで無限湧きに近い荒業だった。
軽く死ぬかと思ったわ……
マジで1時間前の自分を殴りたいわ……
溜まったオークの素材は、4,800個。
無知でバカすぎる俺のアホな行動の結果、余裕でカンストできる素材の数が溜まった。
俺は、電子レンジを槌に変えて杖代わりにしてフラフラの足でエントランスへと戻り、そのままプライベートルームへと向かって歩き始めた。
今日はもう無理だ……
マジで疲れた……
この時の残り時間は
36:02:41
後、36時間でここからの強制退去だ。
って言うか、未だに階位が4のままだ。
俺のパラレルが戦えなさすぎて、ホント遠回りしまくっている感覚しかない……
「夜市、人型に戻って良いぞ。【解除】」
俺はプライベートルームへと倉庫からソファーを取り出して座り、手にしている槌を夜市へと戻した。
「お? 一体どうしたの? 私を解除するなんて?」
「俺はこのまま風呂に入って寝る。 って事で、俺が寝た後、5時間後に起こしてくれ。 色々とありすぎてマジで寝る」
「マジで寝るんだったら、10時間くらい寝れば良いでしょ? まだ時間もあるんだしさ」
「ブラックな社畜だった俺を舐めるなよ。 5時間寝れれば長時間なんだよ。 俺の睡眠時間なんて、入社してからずっと3時間が平均だったんだぞ」
「あんた、良くそんなんで身体が保つわね…… って言うか、たかだか2時間増えただけで長時間って…… あんた、その会社辞めて正解よ…… とりあえず、間取って7時間後に起こすわよ? 良いわね?」
「…………もう疲れすぎて言い合いするのも面倒だから、それでいいや…… こんなん、起きたら確実に筋肉痛じゃねぇか……」
夜市の押しに負け、与一はプライベートルームにあるシャワールームへと向かって行った。
「どんだけ疲れてるのよ…… ゾンビみたいな歩き方じゃない……」
20分後、風呂から与一が上がってくると、プライベートルームには食欲を唆るスパイシーな匂いが漂っていた。
「な、なんなんだこの匂いは!? テロか!? 飯テロか!? 飯ゲリラか!?」
「ご飯作っておいたわよ。 倉庫から適当に食材取って来たけど、 あれって、使って良かったのよね?」
「なっ!? 何だと!? お前がご飯を!? それって、パラレルワールドのパラレルワールドなご飯じゃないだろうな! 匂いだけいい匂いで、味はアレとかって言うやつじゃないよな!? ちゃんと食べられるんだよな!? ダークマター的な物質じゃないよな!?」
「ウザイし五月蝿いわよ!! あんた、私に喧嘩売ってんの!? いいからこっち来て黙って食べてさっさと寝なさいよ!」
夜市は勢いよくソファーから立ち上がり、ソファーの前にあるローテーブルを指さした。
「は、はい……」
与一は夜市に言われるままローテーブルの前へと腰を下ろし、目の前のご飯を眺めた。
「…………至って普通な見た目の料理だな……」
「あんたは何が言いたいの? そんなに私と殴り合いがしたいの?」
夜市はボキリボキリと両手の指を鳴らしながら与一を睨み付けた。
「いえ。 めっそうもございません。 美味しく召し上がらせていただきます」
「急いで作ったから一品しか出来なかったけど、寝る前なんだからそれだけで十分よね?」
与一の前には良い感じに黒く、香ばしくもスパイシーな匂いを漂わせているソース焼きそばがあった。
いや、オムそばがあった。
「……いただき、 ます」
与一はお箸を手に取ってマヨネーズがかかっている卵焼きを割る。
箸によって割られた卵焼きは、中がトロットロの半熟であり、半熟卵と熱で少し溶けたマヨネーズは、ソースで良い感じに黒くなった中華麺と絡み合いながら与一の口の中へと運ばれていく。
「フグぅ!?」
「え? どうしたの!? 熱かったの!? お水はここにあるわよ!? 大丈夫!?」
夜市はアタフタしながら与一へと水を差し出す。
「うっ………… 上手ぇ……… 何コレ!? めっちゃ美味しいんだけど!? ハグハグハグハグ──」
「そ、そう? 喜んでもらえて何よりだわ」
夜市は、少し恥ずかしそうに顔を逸らし、与一は無言になって一心不乱に麺を掻き込んだ。
与一はものの数分で完食し、満足そうな顔を夜市へと向ける。
「いや〜。 美味しかった! 食った。食っ──」
ガシャん!!
そして、与一はいきなりローテーブルへと顔面から突っ伏した。
「えっ!? ちょっ!? どうしたのよ!?」
夜市は吃驚して与一へと近づくと、与一は寝息をたてて寝落ちしていた。
「…………どんだけ疲れてたのよ…… って言うかコレ、7時間後に起こしてもちゃんと起きてくれるのかしら?……」
残り時間
35:00:26




