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イバラノカゴ  作者: 咒 弍一郎
【1章】苦労の絶えない毎日
23/29

〜第20話〜 破天荒エルフ


 昨日買った奴隷が届くらしいのでギルドに出向かず、家でただゴロゴロしているわけだが…。


 暇だ。


 外を見ると、見事な曇天。

 時刻は朝八時。

 まだ早いし来るわけ無いかと窓から離れ、布団に倒れかかるとピンポンが鳴った。


「はいはーい! って、影太くん!?」


 リリーが出ようとするが、その隣を走って追い抜き、玄関に向かって一気に駆け抜け、ドアを開けた。


「エイタ・ニイロ殿だな?」


 声の主は、昨日奴隷市場にいた用心棒兼店番のラガ。

 ドアを開けた瞬間、いきなり現れたような感じがして少し驚いた。

 いると分かっていた筈なのに。


 隣には昨日買ったエルフがいる。

 服は着せられているが、足枷以外は全て付けられたまま連れられていた。


 通行人にすごい目で見られたんじゃ無いの…?

 割と普通めの服を着せてるとは言えどもさ。


「商品を届けに来てくれたんだよな、どうも」

「…錠前の鍵だ。これからもご贔屓に」


 そう言って、ラガは去っていった。


〈本当に…ありがとう…ございます…〉


 そう聞こえた気もしたが、何と答えるべきかが思い付かなかったので何も答えずに手枷と目隠しを外してやる。


「ああ、やっと貴方の顔を肉眼で見れた…。

 口も使って喋れる…自由ってサイコー! ふひひ」


 ヘラヘラ笑いながら手を広げ、全身を伸ばしている。

 …奴隷だった自覚は全く無さそうだな。

 想像以上におちゃらけてやがる。


 声の調子もめちゃくちゃいい。

 咳払いも無しに普通に喋り出すとは驚きだ。


「おい、首輪」

「あ、ごめんなさい、お願いします」


 なんだこの浮き沈みの激しい口調…。

 まあいいや、気にしないで首輪を外してやる。

 想像以上の重さだが、とりあえず手枷達と一緒に玄関に置いておこう。


 さて、何か言う事あったか…。

 そう考えていると、目が合う。

 白い肌に、青色の目。スカイブルーのロングヘア。


 めっちゃ美人やんやばいどうしよキョドっちゃう…なんて事もなく、気になった事を聞いてみる。


「飯は食ったか?」

「ええ、一応少しだけですが、食べましたよ」


 なるほど、ならいいか。

 じゃあ次、風呂。

 想像よりもマシな衛生状態だったとは言え、どうせ水浴びせられただけだろう。

 さっさと風呂に入ってもらわないと。


「なら風呂に入れ」

「お、お風呂まで頂けるとは…なんと慈悲深い事か…。

 今まで冷水しか浴びてこなかったので本当に助かります…」


 エルフの介抱をしながら風呂に運んでやろうとすると、リリーが鬼の形相でこちらを見ていた。

 そういえばこいつの事忘れてた。


 昨日の店主の発言を判断材料として見るに、リリーが信仰しているグーナカカ教は奴隷制度を許してないんだっけか。


「奴隷を買ってくるなんて…信じられません……」


 小さな口を開き、ボソリと一言。

 こりゃ相当怒ってるな。

 事前に作戦は考えてたし、まあ問題ないけど。


「落ち着け、奴隷として買ったわけじゃ___

「返品してきてください」


 アカン、思ってたより融通が利かん。

 話を聞いてくれる気配すらない。


 じゃあこいつと一緒に出て行くか。

 宿代は十分あるし。


 でもなぁ、リリーとジョイが仲良い以上は下手な事は出来ないよなぁ…。

 うーん…。


 どうにかして話を聞いてもらうしかないか。


「だから奴隷としてじゃ___

「お待ちください」


 急にエルフが口を挟んできた。


 お、何を言うつもりだ? まさかこの状況を利用して、上手い具合にリリーを怒らせて逃げ出したりとかしないよな?


「この方は、転移者であるにもかかわらず、見知らぬ土地の奴隷市場で一人、必要以上に虐げられていた私を見かね、身の丈に合わない程の大金を出してまでして救ってくださったのです。

 その上この私を奴隷としてではなく、教師として雇うと、そう仰ってくださったのです!」

「そ、そうであったとしても、奴隷市場から買ったんじゃあ___


 あれ? こいつ、思ってたよりもやるな。

 融通の利かないリリーが押され気味になってる。

 って待て待て、身の丈に合わない程の大金って何!? やめて? そうやって俺の事を遠回しに馬鹿にするのやめて!?!?


「グーナカカ教の尊い教えについては私も幼少の頃より深く学んで来ましたが、その歴史を振り返れば、人は皆平等にあるべきという理念が基盤にあり、そこから奴隷制度を許さないという教義が出来上がった。違いますか?」

「そ、それはそうですが…しかし…」


 元奴隷の割には毅然とした態度で淡々とリリーを詰めている。


 それをニコニコしながら眺める俺。

 場違い感。


「で、あるならば、この場における私の立場は奴隷ではなく一般人。

 あなた方と平等に扱われる存在。

 買った本人である彼と私自身がそう認めているのですからこの国の奴隷法に則て判断しますとそうなりますよね」

「あ、うぅ……えっと…」


 おっと早速エルフさんの年の功発動。

 お婆ちゃんの豆知識。

 豆どころの規模の知識ではないけど。


「もし、それでも尚、私や彼を責めるのであれば、貴方は背教者となりますが…」


 いや、言い過ぎ言い過ぎ。

 めちゃくちゃ助かったけども言い過ぎだ。


「わ、分かりました! 分かりましたからもう! お風呂入ってきてください!

 入り方は影太くんに教えてもらってくださいね!

 朝ご飯も多めに作ってあげますから、それまでごゆっくり!」


 リリーが顔を真っ赤にしながら逃げるようにキッチンへ走って行った。


「では、失礼しますね」


 完全勝利。

 同時にこいつが思ったよりも有能そうである事も知れて大満足。評価星五。

 うちの融通利かない馬鹿ロリを言い負かせてくれて助かりましたとレビューつけといてやるか。


「ところで自己紹介がまだでしたね、シュリエール・ド・プロッツェと申します。

 長ったらしい名前で不便だと思いますので、シュリと呼んでください。これからお世話になります」


 そう言って、やたらと綺麗なお辞儀をした。


 今更だがこいつの名前知らなかったなぁ、完全に聞くの忘れてた。

 忘れたまま風呂に入れようとしてた。


「エイタ・ニイロだ」

「なるほど、影太様とお呼びしますね」

「様いらないから」

「え? …あ、了解しました…」


 そのままエルフを風呂場に連れて行ってやると、俺がいるにも関わらず、無遠慮に服を脱ぎ出した。

 まだシャワーの使い方も何も教えてないのに。


 しかし、他の奴隷と比べれば、監禁された時間も短く、栄養状態がいい方なのか、スカイブルーの長い髪にはツヤがあり、胸は程良く膨らんでいる。

 前と同じ事言ってる気がするが気のせいだ。


 って待て待て、あっという間に全部脱いでんじゃねえよ!

 いかんだろ!

 つい眺めてしまったが逃げよう。

 こいつを買った張本人ではあるが、逃げよう。


「影太様…いえ、影太さんって今、お幾つです?」


 やたら胸と股間ばかり見てると捕まり、年齢確認された。

 未成年はダメってかクソ。

 ああ、軽蔑されたかも知れないが、仕方ない。


「16…」

「あらお若い、雰囲気は随分と大人びていらっしゃるのに…」

「…すまんな」

「いえいえとんでもない。

 全然いいんですよ? むしろ襲ってくださっても結構ですので」


 …何を言ってるんだコイツ。

 未成年淫行だろ…って、この世界だと成人の年齢とか違いそうだな、やっぱナシ。


 だが、大丈夫なのか? その発言。

 こいつ、貞操観念に問題があるのでは…。


「それはどうかと思うぞ」

「くすっ、冗談でございます。

 私は奴隷ではなく教師ですものね。うひひっ」


 はあ、イタズラされたというわけか。なるほど。


 イラっとしたので『無慈悲』を発動させた上で、乳首をつねってやろうかと思ったが、人としてどうかと思ったのでやめておいた。


 無視して話を進めよう。


「風呂の使い方は分かるか?」

「ええ、心得てます」

「分かったけど俺の前では素で喋れ。ふざけてる時と違い過ぎて違和感がある」

「あ、見られてたか…はい、そうします…」


 昨日からずっと聞こえてたからなお前の口調。

 さっきの『自由ってサイコー!』ってやつなんかも思いっきり聞いてたしなんならちょっと笑ってたじゃん。気付かなかったのか?


「じゃあ、ごゆっくり」

「一緒に入ったりはしないんだ…って無視しないでよ! ちょっとー!」


 最後の余計な一言はスルー。

 風呂場のドアを閉め、脱衣所の棚からタオルを取り出し、着替えの側に置いてやった。


 その時気付いてしまった。


 あいつの着替え、さっき着ていた服しかない。

 つまり、つまりさっきまでこいつはノーパンだったのか…?


 大慌てでリビングに向かうと、机の上に朝食が並んでいた。

 俺用のお椀には、なぜかいつにも増して大量に具が入ってる気もするが、今はいい。

 それより緊急事態だ。


「おい! リリー!」

「…なんですか?」

「パンツをくれないか?」

「うえ!? な、な、なな、パ…パンツ!? 何を言ってるんですか!?

 何に…ナニに使うつもりなんですか!?」


 あ、そうか。

 言って数秒後に気付いた。


 こいつのパンツ、見た事は無いが、多分子供用だ。

 身長が俺ぐらいあるあのエルフのケツが入るわけがない。


「すまん、やっぱいい」

「は、はあぁぁ!?」

「大人用のパンツを買ってきてくれ。代金は俺が出すから」

「私のじゃダメなんですか!? って、なら

自分で買いに行ってくださいよそれぐらい!! 何に使うかは知りませんけど!」

「なんでだよ、俺が買ったら変態みたいになるだろ」


 つか、何に使うか知りませんけどってなんだよ。


 ………あー、そうか、完全に理解した。

 残念な事に、既に変態みたいにはなってたようだ。

 説明を怠ったせいで。


「すまん、あのな、さっきのエルフな、着替えを確認したらパンツが無かった。

 要するに、ノーパンだった。奴隷市場の連中が出し渋ったんだろう」

「……あ……そういう事でしたか……はい…買ってきます。代金は私が出します」

「助かる」


 十分後、リリーが帰ってきた。


「…着替えのところに忍ばせておきましたから」

「よくやった」


 更に5分後。

 朝食が冷めた頃になって、ようやくシュリが出てきた。


「あの、パンツありがとうございます」

「いえいえ、これぐらい当然ですよ」

「出来ればブラも欲しかったところですが…そういえば、貴方への自己紹介がまだでしたね。

 シュリエール・ド・プロッツェと申します。気軽にシュリと呼んでください」

「リリー・クルスです。先程は失礼しました」

「なあシュリ、ここでも素で喋ってくれ」

「助かります、そうします」


 奴隷って、名前を奪われたりしないんだ。

 あ、でもそうか、こいつの今の身分は奴隷じゃないのか。

 じゃあ奪われてたとしても別に意味無いのか。


 そして三人で会話を交えながら、えらく豪勢な朝食を食べる事になったが、俺は朝に弱い体質なので、六割ぐらいで限界になってきた。


「あれ、影太くん、限界ですか?」

「…朝弱いからな」

「へぇ〜、お残しはダメって___

「なら、私が残りを頂いてもいい?」


 リリーが何かを言いかけたが、シュリが口を挟んできた。

 シュリの方の食器を見ると、全て空になっている。

 少し食ったって言ってた筈だがよく食うな。


 しかしな…素で喋れって言った筈が、素振りだとかなんだとかも全て素になってないか?

 戯けた口調で喋るだけなら何も気にならないが、ここまで無遠慮だとちょっと思う物があるな…。

 待て、戯けた口調って時点で行き過ぎてるような気もするが…。


 まあ…いいか。

 俺は寛容なので、いいって事にしとく。


「助かる」

「じゃ、頂きまーす」

「むぅ…」


 リリーは不満げにパンに齧り付きながら、こちらを見ていた。

 とりあえず適当に俺を叱りつけて優位に立ちたかったんだろうが、知らん顔して席を立ち、歯を磨きに行った。


 先ほどまでの食卓での様子を見るに、一応あの二人はある程度は会話が出来るが、リリーが子供過ぎるせいで、どこか距離があるようにも見える。

 が、正直そこまで興味はない。

 魔術とか剣術について教えてもらえたらそれでいい。


 あ、二人の会話について行けずに拗ねてるわけではないからな。


 そういえば、ジークシアも魔術について教えるとか言ってたし、一回対面させてみるか。

 どっちの方が優秀か気になる。

 もし、ジークシアの方が優秀なら発狂する自信はあるが。


- - - - - - - - - - - - - - -


 やる事も無いので部屋に行き、武器と鎧の支度をして、ギルドに行く準備をする。

 まだ九時頃なので、ゴルト達が待っている筈だ。


「およ? 冒険に行くの? それなら私も連れて行ってよ」


 びっくりした。

 いつの間にか、部屋に忍び込んだいたシュリに声を掛けられた。

 本当にいつの間に入ったんだ。


 そう思いながら振り返ると、金色のへそ出し鎧を纏ったシュリがいた。

 また随分と攻めた格好だなぁ。

 腰には青色の外套のようなものを巻き付けており、その隙間には見事な装飾が施された金色のレイピアの柄が姿を覗かせていた。


 ん? そういえばこれ、どこから出した?


「あの、何? その装備。どこから出したんだ?」

「これー? 前に使っていた装備のスペア。

 ふっふっふー、奴隷になる前にマジックボックスに隠し持っていたのだよぉ」

「マジックボックス?」


 何それ。ジークシアがくれたカバンの事か?


「あれ、もしかして知らないー? なら、早速教えて差し上げましょう。先生頑張っちゃうぞ〜ぅ?」


 教える…? あ、なるほど、何かの魔術か。

 察したぞ。



 五分後。



「ま、まさか影太様? そ、そんなにお強い方ではあらせられなかったのですか…?」

「あの、様付けとその口調やめてください」

「うっひひ、ごめんごめん」


 マジックボックスというのは、自分しかアクセス出来ない空間にアイテムをぶち込むという、ドラ○もんもビックリの魔術だ。


 やり方はというと、手の上に自分しか知らない空間をイメージし、そこに物を突っ込む。それだけだ。


 そこまでは良い。

 だが、俺がそれを実践した際に生じた問題は、その空間があまりにも狭すぎて、何も入らなかったという事だ。

 どうイメージし直しても一定の大きさ以上にはならない。

 まさか硬貨が一つ入る程度の大きさの空間しか開かないなんて。


 暫くはジークシア様のおカバン様にお世話になる事になりそうっす。


「でもまさか第二容量成長期は疎か、第一容量成長期すら来てないとは…」

「幻滅したか?」

「いや、全然? むしろ、弱くて助かった!

 その方が育てがいがあるからにゃ〜!」


 うひひと笑いながら肩をポンポン叩かれながら慰められたが…『弱くて助かった』ですか…そうですか…。

 弱いんすか…。


 素で喋れとは言ったけど、流石にここまで言われると精神的に来るものがあるぞ…。


 ああ、クソ…大体なんだこの元奴隷エルフ…破天荒が過ぎるだろ…。


- - - - - - - - - - - - - - -


 シュリを連れてギルドに行くと、当然シュリに注目が集まった。

 温和そうで整った顔立ちに、スラリと伸びた長身を飾る金色のへそ出しの鎧。

 良さげな装備の美人の新顔となると、そりゃ注目も集まるよなぁ。


「登録するんだろ? 同伴は?」

「だいじょぶだいじょぶ、一人でやれるよ〜」

「そうか、なら終わった頃に俺のところに来てくれ。

 どっかの席で仲間と一緒にいると思うから」

「分かりました! では、行ってまいります!」


 ガッツポーズした後、スキップしながらカウンターに向かって行った。

 全く、お気楽なやつめ…。


 嘆息し、辺りを見回すと、ゴルト達が複雑な表情を浮かべながらこちらを見ていた。

 シュリがいたからか…。

 何と思われたのかは知らないが、釈明する為、ゴルト達の方に行こうとすると、急に知らん女に「影太さーん」と呼び止められた。


 声の方向に目を向けると、桃色の鎧ドレス。

 顔を見てやると、人形のように整った顔立ちに、毛先だけ真っ赤に染まった黒髪のツインテールの少女がこちらをニタニタと笑いながら見ていた。

 どことなく嫌悪感を感じるのは何故だろう。


「誰」

「……はっ! …私とした事が失礼しましたぁ、てへっ♡」

「………」


 ウインクにてへぺろ。

 ……何この女、気持ち悪ーい。キモーい。無理なんだけどー。


 つくづく思う、この世界の顔面偏差値が高くて良かった。

 こいつがブスならここで殴り殺してた。


「えへへ、申し遅れましたぁ〜。

 Bランクチーム、〔死神の鎌〕のリーダーと人事を務めております、ヴァレーナ・フェルディナン・モントキンと申します〜」


 ご丁寧に挨拶どうも。

 揺れるツインテールに一瞥くれてやると、隙間から夥しい数のピアスが刺された耳が見えた。

 こちらの世界にもこういったファッションは存在するのか。


「うちのチームに入って欲しくて声を掛けてみたんだけどぉ〜…もうパーティには所属しちゃってたかな? 今なら優遇しちゃおうかなって思ってたんだけど…うふふ…君みたいな賢くてイケメ………優良株さんには、チームの下っ端なんかじゃなくてさ、私直属のパーティの方に入って欲しいんだよね…」


 え、何? コイツさてはあれか? 童貞に『もしかしてこいつ、俺の事好きだろ』と思わせ、最終的にそいつの財布をとっ喰らう系統の性悪女に似たような系統のやつか?

 あー、オタサーの姫ね。


 この時点で何か負けた気がする。

 クソ、騙されんぞ。

 オタクだからといってナメやがって。

 

 四年程前の俺ならこれだけでT○itterに『オタクを馬鹿にするな』って投稿してただろうな。

 ハッシュタグ拡散希望を添えて。

 ああ、みっともない。


「グループなら所属している」

「へぇ、パーティには所属してないんだね?」

「あ、はい」


 そう問いかける女の茶色い瞳は、太陽のようにギラギラと輝き始めた。

 その目に気を取られていると、いつの間にか、えらく間合いが狭まっていた事に気付いた。


「なら、この後予定はあるかなぁ? もし無かったらさ、私と食事にでも行かない?

 そのぉ、パーティの件についてお話したいんだけど…あ、勿論お金は全額私が出すよ〜?」


 ああ、めんどくさい。

 パーティとグループの違いを理解したつもりでも、下手に返事が出来ない。

 困ったな、どう断りゃいい?


 黙っていたら、服の匂いを嗅がれる、腕を揉まれるなどの過剰なスキンシップが始まった。

 より一層困り果て、ゴルト達の方を見て助けを乞おうとすると、既にゴルトとジークシアがこっちに向かって歩いて来ていた。

 超ナイスだ。


 でも待て、ややこしい事になったりしないだろうな。

 なぜか嫌な予感がする。


 その不安の正体は、ヴァレーナの視線の向く先と手の震えである事に気が付くのには、そう時間もかからなかった。

 次回からの更新についてお知らせ。

 一応だいぶ先まで書けてるのですが、筆者が右腕を二十針以上縫う程の怪我をしたので、完治するまではスローペースに投稿します。

 もし追ってくれてる人がいたら本当に申し訳ないです…。

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