第5話 戦闘終了
まだリアルタイム投稿を狙ってます。
「ごちそうさまでした」
戦闘は30分に及ぶ死闘の果てに僕の勝利で幕を閉じた。食べ終わって少し経ったが、まだ舌がヒリヒリしている。あまりの辛さに涙まで出てきた程だ。夕食に食べる時には何か工夫をしたほうがいいだろう。味覚の変化は結構大きく、これからの食事は量だけでなく味付けのほうにも気を使っていかねばならない。それにしても、日常生活の中での楽しみの一つである食事を奪われてしまったのはつらい。
昼食を食べ終わったが、まだ片付けが残っている。片付けも料理のうちだ。フライパンに残っているパスタもお皿に移してラップを掛けておく。今日は油を多く使ったのでスポンジを良く泡立てておく。軽くフライパンと皿の油を紙で拭き取り、スポンジで擦って汚れを落としていく。水で泡を流し、水切りかごに並べたら片付けは終了だ。時計を見ると時刻は正午12時ジャスト。慣れない身体ということもあり、少々手間取ってしまったがそこは仕方がないだろう。サービス開始は午後一時だが、三十分前からログインはできる筈なのでそろそろ準備でしていても良い頃だろう。なんてことを考えているとメッセージを受信した。
『いよいよサービス開始まで一時間、速攻でスタートダッシュ決めてトッププレイヤー入りだ!』
うん。いかにも脳筋らしい発言だ。
『お前は少しは宿題しろ、今年こそは終わらなくても手伝ってやらないぞ』
すぐに脳筋を諌めるメッセージが送られてくる。
『僕たちは来年受験だし、思いっきり遊べるのは今年までだからいいんじゃないかな』
適当に返すと来年受験という免罪符を手に入れたレンが暴走を始めていた。
『俺たちは来年受験なんだから、遊べる時に遊んどかなきゃ損だよな。ところで今通話できるか?』
『あぁ』
僕もシュンに習って了承しようとした所で気がつく。今通話に参加してしまうと、この現状を知られてしまうではないか。文面上では何事もないように振る舞うことも出来るだろうが、声だけは誤魔化しようがない。そもそもこの状況をどうやって他人に説明すればいいのか分からない。まさか目の前に名乗り出て自分が『神宮真央』本人だとでも言えばいいのか?果たしてそれで信用されるのだろうか。どう頑張っても迷子か不法侵入として片付けられるのが精一杯な気がする。両親・姉ともに遠方に赴任や下宿をしている身だ、余計な心配をかけたくない。それに、両親は僕のことを信頼した上で一人暮らしを許可してくれているのにその信頼を裏切る訳にはいかない。しばらくはこの現状をバレないように誤魔化さなければならないだろう。
『準備いいか?掛けるぞ?』
考え事をしている間に催促のメッセージが送られて来ていた。とりあえずは誤魔化さなきゃまずい。そのまま通話参加ボタンを押して参加する。
「おっ、入ってきたか」
「少し遅かったな。取り込み中だったか?」
『ごめん、ちょっと今水仕事してるからマイクは使えない』
普段から使っているアプリは、メッセージ機能と通話機能が同時に備わっているので通話に声を出して参加しなくても会話を聞いて文言だけで会話に混じることができるのだ。言い訳はちょっと苦しいかもしれないが、まぁ逃れられることができる範疇だろう。
「そういえば昼飯の時間近いしな、一人暮らしだから仕方ないだろ」
どうやら追求はしないようだ。ひっそりと安堵する。
「ちょっとギリギリ過ぎじゃないか?事前の情報だとログイン前にあまり飲み食いしない方がいいらしいが」
これは快適なゲームプレイの為に運営が告知している注意事項の一部だ。例えばゲーム内で戦闘や観光をしているのに現実の肉体の方が便意や尿意などを感じることができなければ、ログアウトしたら大惨事なんてことになってしまう。そのような事態が起こらないように現実に何か異常が起きると自動的にログアウトの処理がされるようになっているとのこと。
『もう食べ終わったから今は片付けしてるだけだよ』
運営の出した情報を全て熟読していた僕もそれに関しては完璧に把握している。利用規約もしっかりと読む性質なのだ。
「それもそうだよな。ゲームに関してだけは流石に抜け目無いな」
「そこがマオらしいところだけどな」
『なんかゲームにしか興味が無いみたいに言われてる気がする』
「「そう言ってるつもりだ(ぞ)。」」
『これはひどい』
閑話休題。無駄話はここまでにしておこう。
結局その後は他愛もない話をして時間を潰した。
「ログイン可能まであと5分だからそろそろ準備に戻るかな」
「了解」
『把握』
わ
「じゃあログインしたらすぐに集合な。噴水広場でな!」
そういって通話を抜けていったので僕もそれに習う。
そろそろこちらも準備に戻らねば。
間に合えば本日中にまた更新します。