表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Code:Arcadia  作者: 星霜
2/49

第1話 始動準備、急停止

気持ち的な問題でこの話から少しだけ時間を同期させています。

説明が長くなったが、そろそろ自己紹介をしようと思う。


僕の名前は神宮 真央。16歳の高校2年生だ。

名前でよく女性と勘違いされがちだが、男である。特筆すべき点としては、両親ともに仕事人のため家事全般は出来るし、料理には特に自信がある。容姿はいわゆるフツメンというやつで別に女顔なわけでもないし、ついでに彼女がいた経験もない。モテないんじゃなくて作らないだけだ。


そしてここまで延々と語ってきたので気がついている人も多いだろうが、僕、神宮真央は生粋のゲーマーである。物心ついたときからゲームで遊んでいたし、友人もそれ繋がりで仲良くなったのが大半だ。将来もゲーム業界への就職を目指し、ゲームについての情報収集をおこたることはなかった。


ことは2年前のある日、いつも通りにインターネットを中心に情報を眺めていると、ひとつのスレが目に止まったのだ。


1

日本国内でVRMMO開発してる企業があるらしい...

2年後の夏頃に発表する予定らしいな


4

>>1

それ何年前の話だよ...難易度的に実現不可能とかいう話じゃなかったか?


8

>>1

ソースは?


14

>>8

悪いけどソースは言えない。

あんまり書き込んだりすると個人まで割れかねないから無理だわ。


22

>>14

まぁそうだよなwそんな時代遅れなことしてる企業なんてないんだからさっさと自白して楽になっちまえよw


と、まぁ一部を抜粋すると大体こんな感じだ。

何十年も前にいくつもの大企業が経営を追い込まれるような損益をだしているのだ。今頃そんなことを始める物好きな企業なんてない。

普段の僕だったら信憑性のない話、くだらないと一蹴しただろう。

しかし、僕はそのときなんとなくその情報は事実かもしれない。そんな風に感じてさらに調べ始めた。国内 VRゲーム 開発中 の検索ワードに引っかかったページを片っ端から読み漁り始めた。何時間程経ったのか、名前を聞いたことはない企業だったが確かにVRゲームを作るのに必要な人材を集めているようだった。

数時間経ったあとで、スレに確認をしようとするとページが見つからない旨のメッセージが表示された。


ここで僕は確信した。あのスレの書き込みは事実で、開発関係者かそれに近しい人がネットに漏らしてしまった。あとからそれを慌てて削除したのではないかと。


僕はここまで考えてから、中学に入学してから同じ部活動で出会った親友2人にメッセンジャーアプリを起動して報告した。


『なんかネットでVRMMO開発してるって情報拾ったよ!ついでに裏も取れてる。』


すると、すぐに既読が2件ついて


『まじで?』


『お前がそこまで断言するなんて珍しいな』


と、それぞれから返答が帰ってきた。


『で、その企業の名前がDream Arts Techっていうらしいんだ』


『聞いた事のない会社だな...』


『意訳すると"夢を描く技術"ね。面白そうな社名じゃん』


『もちろん2人もそんなゲームがあったら遊んでみたいよね?』


『そりゃ、当然だろ?今までラノベ以外ではなかったようなゲームだぞ。何度も夢にみたさ』


『仮想現実体感型ゲームとかかなり値段が貼りそうだな…』


予想通りの反応に思わずニヤニヤするのを抑えられない。


『だから2人も高校に入学したら一緒にバイトでも始めないかってね』


『おま…まだ完成するとは決まってないんだろ。ちょっと気が早すぎはしないか?』


そう反応があった。しかし、それも予想通りだ。


『もしも完成しなくても、貯金があれば車の免許取ったりに使えるし、ちょっと早めの社会経験にもなるから無駄にはならないよ』


『さてはこんな話になると予想して文章を事前に考えてから送ってきてるな?』


『バレたか、まぁ本音をいうならどうせやるなら気の知れた2人とがいいかな。って思ってね』


『遊ぶんなら3人で固定パーティーでも組んだ方が連携もしやすいし、悪い話じゃないな。俺は乗るぞ!その話。』


『2人がやるんだったらこっちもやるかな。それに、お前らだけだと物理で殴るだけの脳筋になりそうだからな。』


『『うっ…』』


普段から色々なゲームで一緒に組んだりする僕らだが、僕と1人の親友はゴリゴリの脳筋思考なので物理耐性の高い敵や、遠距離攻撃を多く持つ敵相手に非常に苦戦することがよくあるのだ。

その点もう1人の親友は遠距離から魔法や狙撃などでサポートするのが上手く、僕たち前衛(のうきん)の生命線になっている。あと、パーティーの頭脳でもあるので彼が居れば大抵の危機は乗り越えることができるだろう。


『じゃあ2年後の夏までにちゃんと金貯めておくんだよ?』


『おう』


『1番心配なのはお前だがな』


『あ?ひでぇ!』


こうして僕達は他のプレイヤー達に先んじて情報を手に入れ、来るべきときに備えるのであった。



こうして、僕達3人は高校入学と共にバイトを始めて着々と資金を貯めつつあった。最初は全員同じバイト先で働こうとしたのだが、頭脳の方が『サービス開始で辞めてしまうのだから、3人分の穴を急に作るのは店側に迷惑』という実に理知的な提案をしてきたのであった。僕と筋肉の方はそんなことはまったく考えていなかったのだが、反対する理由もないので結局全員バラバラのバイト先で働くことになったのだ。



最初にバイト先が決まったのは意外にも脳筋のほうだった。悔しいことに奴はかなり顔の整ってる方で、雰囲気重視の有名ブランドコーヒー店に決まったそうだ。イケメンだからとでも言うのか、イケメン死すべし慈悲はない。

しかし、実際に働いているところに来店(ひやか)しに行くと丁寧に接客してくるのが普段とのギャップで想像以上おかしくて吹いた。気を利かせてクラスの連中にさりげなく情報を漏らすと、毎日のように通う女子がいるそうで対応に困っていた。後日、どこからか密告したのがバレて詰められた。なんでだ。


その次に決まったのは僕だった。僕は他の2人と比べて顔が良い訳ではないので、近所のファミレスの厨房に回ることにした。ちなみに僕のバイト先も脳筋がさりげなく言いふらしてたみたいだが、女子はおろか冷やかしにくる連中もいなかった。ちくせう。


これまた意外なことに1番最後にバイト先を決めたのは、我らが頭脳であった。奴のバイト先は自分も通う塾で、成績が常に学年トップクラスのため信頼も置かれているようだった。主に中学生を中心に教えていて、個人指導まで受け持っていた。あと個人指導で赤い顔して硬直している女子は問題が分からないのではない、あれは完全に堕ちた目をしていた。

それを『どうしたの?分からないことがあったらなんでも聞いていいんだよ?』なんてことを言うもんだから完全に惚れてしまう中学女子を大量発生させていた。他にも明らかに緊張で赤くなっている女子に『熱でもあるの?無理しないで休んでいいんだよ』とかいいやがった。なんでそんなことを素で言えるのか不思議でならない。そしてそこまで惚れさせておいて何故分からないのかも不思議だ。このラノベ主人公め!余談だが1番最後にバイトを始めたにも関わらず、1番早く目標金額に到達したのは奴だった。解せぬ。


なにはともあれ、全員が高校2年の春で目標金額を達成した。まだ少し余裕があるが、僕は少し余裕を持って惜しまれながらもバイトを辞めた。店長に「君ならいつでも戻ってきて構わない」と太鼓判を押されたので、金銭的に厳しい時にお世話になるとしよう。他の二人はしばらくの間続けるつもりらしい。



そしてもうひとつ報告すべき点がある。

僕は高校入学と同時に念願の一人暮らしを手に入れていたのであった。なんでも両親、主に父親が地方に赴任することになり、母は生活力のない父親に同行する(父は放っておくとすぐに散らかすし、食事もインスタントばかりになる)ことになったのだ。これは正直嬉しい誤算だ。姉も今年からは医学系の専門学校に通うために上京してしまう。今年の夏にはVRMMOを始めるのだ。そこそこゲーマーな姉はともかく、徹夜などしても親に怒られる心配はなくなるからだ。当初は反対されたものの、親友たちと同じ高校に通いたい旨に加えて、家事を滞りなくこなせるようになっていたことが大きな要因だろう。食事をいい加減にするのは許さないし、姉に時折抜き打ちで訪問させるなど色々な条件がついたものの、ほぼ理想と言える環境ができあがっていた。



そして、時は流れて今日は2040年の7月13日。

一般的な教育機関が夏休みに突入する日、つまり終業式にあたる。体育館で校長先生のありがたい話を直立不動で聞いているところだ。続いて生活指導の教員の話が始まったところで、早くも僕の集中力は底を尽き明日から始まる正式サービスへと思いを馳せていた。

PVでの巨大な龍との戦闘シーンは非常に冒険心をくすぐられたし、風景も現実と見分けがつかないほどに精巧に作り込まれていた。

職業の選択にスキル構成や、戦闘スタイルの構想を練っていると終業式はいつの間にか終わっていた。

この後は夏休みの課題が配布され、通知表を受け取れば今学期の学校は終わりだ。

担任がHRの終了を告げると同時席をたちに自然と3人が集合する。


3人とはもちろん僕を含めた親友たちのことだ。せっかくなので軽く紹介をしようと思う。


人あたりの良さそうな爽やかな笑みを浮かべているのが『篠崎 蓮』だ。身長は180cm台と日本人としては少し大柄で引き締まった体躯と温和な性格の持ち主だ。彼が怒ったところは今の見たことがないが、怖いので怒らせてみようとは思わない。短髪で目鼻筋がしっかりと通っており、男の僕からしてもかっこいい顔をしていると感じる。言うまでもなく、こっちが脳筋のほうだ。


もう1人のクールな印象を受けるのが『倉内 峻佑』だ。物静かで落ち着いた性格をしており、多少近寄り難い雰囲気を出しているが実際に話してみると凄く話しやすい相手だ。こちらも蓮とは違うタイプのイケメンで、美形といわれるタイプの顔立ちをしている。凛とした目付きをしており、そこが魅力の1つなんだそうだ。成績は常に学年トップクラスで、何故進学校に行かなかったのか不思議でならない。ちなみに眼鏡が本体である。勿論こちらが知能側だ。名前が若干長いので、親しい人間が呼ぶ時はシュンと呼ばれることが多い。


そして、最後に改めて僕『神宮 真央』の紹介だ。平均的な体格で印象に残りにくい顔と定評がある...以上である。3人組の中では箸休め、おまけなどと言われることもある。


本来なら2人のような人気者は地味な僕なんかとは接点がないのであろうが、中学の部活動で知り合ったことが大きいのだろう。


なにはともあれ、明日のゲームについての会話を3人で始めた。


「2人とももう職業と武器は決めたのか?俺はやっぱりファンタジーといえば剣、大剣持ちの戦士にしたぞ」

彼は幼い頃から武道をならっていたらしく、反射神経などが非常優れている。ゲームでも、前線に出る彼の力はかなり頼ることができるだろう。


「こっちはどうせ蓮と真央が物理職に就くのは目に見えてるから支援砲撃型の魔法職にするつもりだ」

こちらは普段から色々なゲームで遊ぶ際と同じ役割を務めることにしたようだ。PvPやPvEでも相手の行動を先読みして罠を貼ったり行動を分析し、的確な支援をしてくれる。ハッキリいって一番敵に回したくないタイプだ。


「僕はいつも通り触ってみてから決めようかな。珍しい武器とかがあるなら、そっちも気になるし」


そして僕は、このパーティの中では遊撃役を担っている。珍しい武器や、不遇武器を好んで使っているので戦闘力は控えめになりがちだが、それでもトリッキーな戦い方は思わぬ所で役立つことがある。


「やっぱりいつも通りになったな。俺が前線を支えてシュンが後方支援、マオが遊撃か。」


「結局それが一番安定するんだから、無理に崩そうとしなくても大丈夫だろ」


その後もたわいのない会話が続くが、割愛する。校門前で今から塾らしい峻と別れ、レンとは途中まで同じ方向だが、僕も明日からのゲームに備えて食材の買いだめのためレンとも別れる。


「じゃあ明日ゲーム内でね!」


「おう」


「じゃあな」


と、軽く挨拶を交わし今日はその場で解散ということになった。僕は学校が自宅からは少し離れているので通学の際には自転車を利用している。レンは比較的家が近いので徒歩で、シュンは駅前の塾に通う関係上バス通学だ。


一度家に帰宅し、荷物を適当に放ったあと再び外にでる。そのまま全国チェーンのディスカウントストアへと買い出しへ向かった。この辺りでは比較的大きめの店『ノンキ・ホーテ』だ。呑気という名前に相応しく、ナマケモノのキャラクターが特徴的な店である。食料品をはじめとして衣服類に医薬品など豊富な品揃えで、なにより他の店より安価である。

両親から生活費として送られてくるとはいえ、無駄遣いすることはできない。が、明日からは念願のゲームが始まるのだ。少しくらい贅沢することにして普段だったら絶対に買わないであろう高めの牛肉をカゴに入れる。他にも野菜やパン類に保存の効くカップ麺をいくつか購入しておく。

荷物が少し多くなってしまったので、自転車の前カゴには入りきらなかった。そのためハンドルの左右にも袋を引っ掛けて慎重に自転車を漕ぐ。自宅がある程度近くなってきたところで、昔からなんとなくお供え物をしたりしている地蔵が地面に倒されているのを目撃した。


「一体誰がこんなことを...」


ぶつくさ文句を言いながらも自転車を停止させ、起き上がらせることにした。暫く外に出る予定はないので、少しくらい善行を積んでも良いだろうと考えた結果の行動だ。


地蔵を起き上がらせて土を払ったところで赤い前掛けがズレてしまっていることに気がついた。そちらも丁寧に結び直しておく。ついでに先程購入した食品類からおはぎを取り出して供え、軽く手を合わせる。


「……………」


無言でお祈りをした後、改めて帰路につく。


自宅に到着して食品を冷蔵庫に収納したところで買い忘れに気がつく。味噌を切らしていたことをと忘れていたのだ。料理をする上で味噌を欠かすことはできない。仕方なくもう一度出かけることにした。手早く目的の味噌を購入し、今度こそ帰宅する。


明日からは晴れてファンタジー世界の住人だ。信号が青になるのを確認して横断歩道を渡り始めた。そんな風に浮かれていたのがいけなかったのだろうか?しっかりと周囲を見ていなかった僕は速度を緩めることなく、信号を無視して突っ込んでくるトラックに気がつくことができなかった。時間が異常にゆっくりと流れる、トラックの運転手の男性が驚愕の表情を浮かべているのを認識することができた。目前に迫った状態では回避など間に合うはずもなく、意を決して目を瞑った。直後凄まじい衝撃が全身を襲い、即座に意識を失った。

読んで頂けて嬉しいです。

一人称が被っているキャラがいますが、かき分け出来ているでしょうか?よろしければ感想欄にでも書いていただけると、有難いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ