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喪失

 目を覚ました時、自分が今どこにいるのかを認識するのに数分を要した。

 まず目に入ったのは蛍光灯のついた真っ白の天井。そして少しずつ目線を下に移動させていくと、日の光で明るさを増したピンク色のカーテンが見えた。

 それでもやっぱりどこかわからない。それにいつもより視界がぼやけていて焦点が定まらない。


 目が疲れたので再び白の天井をぼーっと見ていると、ふと自分の口元に違和感を覚えた。それに自分の呼吸とは別に肺に酸素が送り込まれている感じがした。

 右手をゆっくりと動かして口元に持ってくると、自分の唇にそれが触れる前にコツンと音を立てて何かに当たった感触があった。

 未だぼやけている視界を今度は自分の顔に意識させると、透明な何かが目に映った。そしてその透明な何かは口元だけでなく鼻の上まで覆っていた。


 それで気づいた。ここが病院だって。

 あれ? でもこの口についてるやつなんて言うんだったっけ。確かにこの機械の名前をどこかで聞いたことのあるはずなのに、思い出せない。まあいっか。


 と、そんなことを考えていると、静かに扉が開く音がして誰かが入って来た。その人は僕の顔をそっと覗きこんだ。その人からはとても優しい、ずっと聞いていたら眠くなってしまうような音が聞こえた。

 あれっ。音がちょっと乱れたぞ?

 そう思った瞬間、その人はパタパタと部屋に乾いた音を響かせて走って行ってしまった。

 なんだ、もう行ってしまった。やっと自分のことを聞ける人に会えたと思ったのに。


 …………。


 自分のこと?


 あれ? 僕の名前って、なんだっけ?

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