メダルと査定
「確認しました、派遣者様。今朝、ヒィラ・メイさんから依頼があったので用意が出来ております。こちらをどうぞ」
窓口でメダルの事を質問すると、窓口のお姉さんはそう淡々と言い、ささっと箱を差し出してきた。どうやら朝合流する前、ヒィラが用意してくれていたらしい。実に話が早かった。あとでお礼言わなきゃな。
で、箱の中に入っていたのが、メダルと呼ばれるもののようだ。五百円玉を二回りくらい大きくしたサイズの銀色のメダルには、フチに何やら模様が彫られていた。きっと偽造防止的なアレだろう。そしてオレは今、オレはえっちらおっちらと足元に積んであった殻を、カウンターに乗せていた。
「うわ、重いなこれ……」
「よっ……と」
もちろんオレ達は一般人なので、しっかり悪戦苦闘している。そう言えばスコルピオの脚を持って来た時もこんな感じだったっけ。ただ、この後がよくわからない。イワシ君にはいろいろと教えてもらおう。
ちなみにモリィはと言えば、役割を果たし切ったのかえらく満足げな顔でオレらを眺めているだけだ。まあここまで十分力になってくれた功労者だから、休んでることに全く文句はない。こんなに重いもの、何個も乗せて歩いてくれたんだな。オレは改めて、ここまで重いものを運ぶのを手伝ってくれたモリィに感謝していた。
「ふぅ……よしっと。派遣者さん、それじゃメダル出して下さい」
「ん? はいよ」
殻をカウンターに積み終わると、イワシ君がそう言った。オレは言われるがまま、手に入れたばかりのメダルをイワシ君に渡そうとしたが、イワシ君は手でカウンターを指し示し、
「ああ、違います。僕に渡さなくていいんで、カウンターのお姉さんに。サヴァ・グーマさん二十五歳独身に渡してください」
と、えらく詳しく渡す先を指定する。最初からそう言ってくれればいいのに。あと受付のお姉さんがちょっと睨んでるから、個人情報垂れ流すのやめてあげて。すごい速さでメダル奪われたし。
「確認しましたでは査定が終わったらお呼びします次の方どうぞ」
すごい速さで追い払われたし。やれやれ。
カウンターで納品を終える頃には、協会内のにぎわいはだいぶ収まっていた。おかげで椅子はほとんど埋まっていて、仕方なくオレ達は協会の隅の壁にもたれかかって休むことにした。
「はあ……。で、この後どうすればいいんだ?」
「どうって、待ってればいいんですよ。査定終わったら、その分の価格がメダルの中に補充されますからね!」
「ほー。お金使いたい時はどうすればいいんだ?」
「どうって、メダル渡せばいいんですよ! あぁ、派遣者さんってその辺りの常識ないのか……」
イワシ君はめんどくさそうな顔で溜息をつき、
「メダルはマグの財産そのもの、ですよ。探索で得た報酬は全部メダルを通して支払われ、協会内で残高を管理しています。支払の時もメダルを通じて、残高から差引されるので現金なんて荷物になるものを持ち歩くマグはいないんですよ。登録されている本人以外が使うと大変なことになるけど、便利なものですよ」
と、思ったより丁寧に説明を続けてくれた。何か物騒な発言が聞こえた気がしたけど、キャッシュカード的なものって認識で良さそうだ。
「コレがねえ。どれくらい残金があるか、って言うのはどうやったらわかるんだ?」
「協会の窓口で、査定の時に教えてくれますよ。それ以外の時でも窓口で聞けば教えてくれますけど、マグなら自分で管理するのが普通ですね」
そういうもんか。まあ今のオレは家もないし財布もカードもない、無一文だ。このメダル一枚で事足りる、って言うのは気が楽と言えば気が楽かもしれない。
「ちなみにそのメダルが震えたら、窓口からの呼び出しです。査定終わったらブルブルするので向かいましょう」
バイブ機能もあるのか。便利だけど、この世界くらいではバイブを気にする呪いからは逃れたいような気もする。さて。まだ、貨幣価値的なものの事とかも聞いておきたいが、そろそろ本題に入ろう。
「ありがとう、イワシ君。ところでイワシ君よ。待ってる間、ヒィラの事を聞いてもいいか?」
「……先に行っておきますが、そこまで詳しいわけじゃないですからね?」
彼はそう言うと、ヒィラの過去を教えてくれるのだった。ヒィラに何があったのか。最高峰レベルのマグだったヒィラが、何故あんなに寂しくマグを続けているのか。




