始まりの時-3
-起きて-と脳内に響く。その声の抑揚は高くまるで子供が欲しい玩具を与えられた時と同じ様な感じに思え、小さく僕は笑いをこぼした。
「なに笑ってるんですか!」
急に大きな声が聞こえ僕は体を反射的に起こし辺りを見回す。
そこは俺が意識を離した土手ではなく、個室の部屋だった。ベットがあり、テレビがあり、生活感がありながらも清潔な場所だった。
そして横にはプリンを一緒に食べたあの娘がいた。
「やっと目を覚ましてくれましたね...起きて直ぐで申し訳ないのですが貴方はこの国の英雄...神郷翔さんでよろしいですね?」
「ああ、間違いないよ。何、サイン?」
「サインなんかじゃないです!」
「...じゃあなに?」
「私の世界を貴方に救ってもらいたいのです」
その言葉を聞いた瞬間僕は頭がクラっとした。この娘は何を言っているのだと。
「本当にお願いします!まずは話だけでもいいので聞いてください!」
「まあ話だけなら...」
「ありがとうございます!」
話だけなら...としか言ってないのに彼女は満面の笑みでお礼を言ってくる。一言で「無理です」とは突っ張れないし、かといって彼女の頭を助けることもきっと出来ないだろう。
「私の世界はもう7000年も前からずっと壊れてしまっています。今の私の世界は空は紫に濁り、木々は枯れはて、海は血で穢れ赤に染まり、文明を築けるような知能を持った生物は絶滅していました。何度も私から世界に干渉しようと努力したのですが、何かに阻まれ世界と干渉が出来なくなってしまっているのです。そこで貴方には私の代わりにまだ壊れてない状態の世界に行ってもらい世界を壊れた状態から7000年前の世界の壊れてない状態に原因を突き止め解決し戻して欲しいのです...どうかお願いします」
彼女は頭を下げる。不安からなのかどこかぎこちなくぷるぷると震えている。
でも僕は彼女に聞いてない事がある。
「名前、まだ名前を教えてもらってない」
「すいません申し遅れました!私は...女神マステマと言います」
女神様ね...いいよ。最近暇だしその設定に乗ってあげよう。
「女神マステマさん。その願い―――」
「はい!ありがとうございます!」
「は?何言って―――」
その瞬間僕の視界は僕がいつも時間を駆ける時のような状態になった。もしかしてあの女神とか言う僕の言葉遮ったやつ...本物なの?
『お前にその力は勿体無い。代わりに私が貰ってあげよう』
声が響いた。その方向には女神マステマの神が黒バージョンの人がいた。女神マステマはピンクだったはずだ。同時に回りの駆ける景色も紫がかる。一体どうなって...体が...重い、