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月の下で

巨大な月を背にした人影は異様に細く、蒼白い月光に照らされた黒い影に紅い眼が怪しく輝いていた。

「まさかこんな辺境で面白いモノが見れるとは思わなかったよぉ?……ケヒャヒャヒャッ」

細い両腕をくの字に開いて上に広げた掌に、ワシャワシャと動く指は笑い声と合間って不気味さを際立たせている。

「………」

(…………なぁ、アラン。ちょっといいか?)

呆然と怪しい人影を見上げ、絶句しているアランに俺は話かけた。

「……あ、あぁ…なんだ?トキヒコは“アレ”のことを知っているのか?」

(いや、あんなのは知らん)

「じゃあ何だ?」

(この世界の月は何でいつも満月なんだ?しかも俺のいた世界の十倍くらいデカいし、気になってたんだ)

「………おい、トキヒコ……」

(なんだ?早く教えろよ)

「なぜお前はこんな状況でそんな事を聞けるんだ?月よりあの気持ち悪いヤツが先だろうが!!」

青筋が浮かぶこめかみを押さえ、怒りを抑えようとしたようだが、発した言葉は大音量な上にイラついているのがよくわかる。

最初のやり取りは小声だったから聞こえなかったようだが、さすがに最後のは屋根上の影にも聞こえたようで笑い声が消え、指も動きを止めた。

「今…………なんて言った?」

天を仰いで止まっていた顔が小刻みに震えながらこっちを向く。漫画やアニメならギギギギッと擬音が聞こえそうだ。

(そんなに怒るなよ。気になったんだから仕方ないだろ?それに、あんな不気味なのと知り合いにはなりたくないし)

「ま、まぁ確かに俺も“あんなの”とは関わりたくないが……いや、だからと言ってだな……」

アランも同感な部分があるらしく、俺達は敵だと思われる影を無視して話をつづける。

「おい、貴様ぁ!“あんなの”とは何だ!!私を無視して何をブツブツ言ってる!」

(アラン、なんかアレがキレそうだから相手してやった方がいいんじゃないか?)

「あー、すまない。それで俺に何か用か?あと、そんな所に登ると家が傷むから、住んでるおじさん達に迷惑だぞ」

アランが面倒くさそうに言ったセリフで怪しい影は我慢の限界を迎えた。

「こぉのぉ……虫ケラがぁぁぁ!」

怒りのオーラを全身に漲らせ、突き出した手に大量のマナが収束していく。

俺達は身構える暇もなく吹っ飛ばされ、家の壁に叩きつけられた。

「ぐはぁぁっ」

(ぐうぅっ……ま、マジか……こりゃまずいな)

全身を強打した俺達は倒れたまま激痛に苦しむ。

「ケーッヒャヒャヒャッ、少しは自分が虫ケラだということを理解したか?」

怪しい影は倒れて苦しむ俺達を見て怒りが収まってきたのか、また先ほどのポーズで高笑いを始める。

(ア、アラ…ン……大丈夫か?)

「ゲホッ、ゲホッ……ハッ、ハッ……くっ、うぅ」

咳き込んだアランは口から血を吐き、呼吸をするが動かすだけで痛む身体では返事も辛いようだ。

(せ、生命の源…なる水よ……傷…付きし者を……い、癒せ……水癒…法)

俺は集められるだけマナを集め呪文を紡ぐが、連戦の疲れと今のダメージで、集まったマナは僅かだった。

発動した回復魔法は弱い光を発して少しだけ痛みを和らげたが、それで終わりだ。

「と、トキヒコ……無理……するな」

(死ぬより……マシ……だろ)

そんな俺達を見下ろし満足したのか、怪しい人影は笑いを止めた。

「ふぅー、スッキリしましたよぉ。どうやらぁ、瀕死で天魔術もロクに使えないようですねぇ」

(天……魔…術?)

「まぁ、手加減したとはいえぇ、私の天魔術を受けて生きているだけでもぉ、下等な虫ケラにしては上出来ですよぉ」

「くっ、そ……お前は……」

「あぁ、そういえばぁ、まだ名乗ってませんでしたねぇ。私は天魔人の一人ぃ、ヴァンテール」

「(天魔……人?)」

「さてぇ、もう用事は済んだのでぇ、私は失礼しますよぉ。ケヒャヒャヒャッ」

ヴァンテールと名乗った人影が笑い声を残して掻き消え、それを見た俺達の視界も暗くなり、意識が遠のいていった………

なかなか話が進まないですが、次くらいで田舎村から旅立ちの予定。主人公にも筆者同様ぼちぼちと頑張ってもらうつもりです。

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