村へ
飛ばしていいようなことを書いてるからグダグダな気がするし、読み難いかと思います。
笑った事で余計な体力を使った俺達は木に背を付けて座りこんでいた。
少し休み、体力が回復してから移動するのがセオリーだ。
「なぁ、ちょっといいか?」
(ん?どうした?)
「いや、その…な……あんたは一体なんなんだ?何で俺の中にいるんだ?」
男の戸惑いや疑問は当たり前過ぎるものだった。逆の立場だったら自分の頭がおかしくなったのかと思うだろうし、不安の方が大きかったかもしれないと考え、俺は自分の事を語ることにした。
(そうだな、まずは勝手に身体の中に入ったことを謝ろう。ごめんなさい…で通じるかな?そして、俺は………)
俺は全てを聞かせた。
生前の名前、生まれた時には病気だったこと、碌に動けず、長くない人生のほとんどを病院で過ごし、発作や薬の副作用で苦しみ、健康な人の生活を羨んで死んだこと……
その後の女神との出会いと、違う世界に来たこと、微妙に間違った願いの叶えられ方で精神体になり、憑依できること……ほぼ全てを聞かせた。
(……で、今の状況だ)
「………そうか……」
男は俺の話を静かに聞き、それだけ言った。
(……出ていけと言わないのか?普通は気持ち悪いと嫌がるだろ?)
「あー、さすがにまだ慣れはしないが、さっき一緒に笑っただろ?あの時にトキヒコから感じたのは純粋な喜びや嬉しさだった。邪悪なものじゃないと思ったからね。トキヒコが居たいと思う間は居ればいい……それに……」
(…………)
「さっきは助けてくれただろ、ありがとう」
(…………)
ヤバい………泣きそうだ……
「ん?どうしたんだ、何も言わないで……っと」
男の目から頬に雫が伝う。
「ぷっ、はははっ……トキヒコ泣いてんのかよ。意外だな」
(っ、笑うな!仕方ねーだろ、俺にはそんなこと言われる経験も無かったんだよ!!)
「あぁ、悪かった。それじゃ、そろそろ行くか」
男は槍を手に取って歩き出し、当たり前の事のように軽く言った。
(本当にこのままでいいのか?後悔しないのか?)
「しつこいな、出て行けって言われたい訳じゃないんだろ?だったら聞くな」
(……わかったよ、迷惑をかけると思うが宜しく頼む。今更だけど、名前を聞いていいか?)
「ん?そう言やまだ言ってなかったか。俺の名はアランだ。宜しく頼む」
(アランか、かっこいい名前だな。それと、できたらアランの事も教えてくれないか?)
「そうか、ありがとう。俺の事か?別に面白い話はないんだが………」
アランは歩きながら自身の話をしてくれた。
これから向かう故郷の村のこと、15歳で成人して兵士に志願したこと、ついでにこの近辺の村や仕えている王都の事も話してくれた。
話を聞いていると視界が開け、防護柵に囲まれた村が見えて来た。
「話をしていたからあっという間だったな。日暮れ前に着いて良かった。あれが俺の故郷、マナイ村だ」
(おぉ、マジで異世界の村だ!ん?なんだこの美味そうな匂いは……アラン、早く行こうぜ)
「あ、あぁ…トキヒコはしゃぎ過ぎだよ」
旅行どころか住んでた街すら遊び回ることができなかった俺にはどれもこれも新鮮で、見たことの無いものばかりだった。
(凄げー、道に鶏がいるぞ!逃げないのか?なぁ、アラン、あの実がなってる木はなんだ?うおっ!畑に牛がいるぞ!!)
村に一歩入った時から俺はテンションが上がりまくっていた。
「鶏や牛がいるのは田舎では特に珍しく無いよ。小さな村はどこもこんな感じだって。ちなみにあの木の実はシーズって名前で、酒に浸けるんだ。それより、ちょっと落ち着けよ」
(仕方ねーだろ、アランにとっては見慣れた田舎でも、俺には違うんだよ。んー、こんな凄げーものが当たり前に見れて、やっぱり健康ってのは最高だな!)
「トキヒコ………」
俺が病気だったことを思い出したのか、アランはそれ以上落ち着けとは言わず、俺の質問や驚きに付き合ってくれた。
「あっ、アランにいちゃん、おかえりー」
「アラン、無事だったか!」
幼稚園くらいの子供の声に、おっさんやおばちゃんが集まってくる。
「ミユ、ただいま。おじさんたちも元気そうで良かったです」
小さな村では全員が家族みたいなものなのだろう。アランと名も知らない村人は一通り挨拶や会話をして、それぞれの家に帰っていく。
(人気者だな、アランは)
「村には若手が少ないからな。家畜もだが、人手は貴重なんだよ」
一軒の家のドアを叩き、入っていくとアランと同じくらいの年の女の子が夕飯の準備をしていた。
「アラン!やっと帰ってきたの?昼までには帰ると思ってたから心配したじゃない」
「ステラ、心配させて済まない。これをおじさんに使ってくれ」
アランは腰の袋をステラと呼んだ女の子に渡した。
「えっ?まさかアラン……」
その時にはアランの目を通して俺にも呼吸の荒い男が寝ているのが確認できた。
(あの人はステラって娘の親父さんか。怪我でもしたのか?)
「怪我は大したことないけど、モンスターの毒に冒されてる。さっきのは毒消し草で、採って帰る途中で襲われてたんだ」
「アラン?何独り言を言ってるの?まるで誰かと話してるみたいだけど……大丈夫なの?」
「あ、あー、いや…その…だ、大丈夫だっ」
心配と言うより可哀想なものを見る目をしたステラと、挙動不審なアラン……そして、ある程度予想してた俺。
(あー、俺の声は取り憑いた相手にしかわからないみたいだから、普通こんな反応だよな。しばらくは話かけないでいるから、後で頭の中で話せるか試してみるか)
その後は俺の事を忘れたようにアランとステラは話に花を咲かせた。薪で沸かした風呂を堪能し、毒消し草から薬を作って親父さんに飲ませ、食事を楽しんだ。
ちなみに俺は薪の風呂の気持ちよさに感動し、囲炉裏に掛かった鍋料理のあまりの美味さにテンションが振り切れ、アランの胃が悲鳴を上げるまで食わせた。
(いやー、ステラの作ったあの鍋は美味かったなー、満腹だ。これもアランのおかげだ、ありがとうな)
「ぐっ……ちょっと食い過ぎだ……腹が……なぜトキヒコは平気なんだ?」
(生きてた頃の俺の飯は最低限の栄養だけで、ほとんど無かったんだよ。こんなに美味い飯を腹一杯食べるのも初めてだし、平気って言うより嬉しくて苦しいって感覚だからな。ステラにはありがとうって言ってくれないか?)
「あぁ、わかったよ。トキヒコと話したら俺もあまり苦しくなくなったぜ」
(そりゃ良かったな。それじゃあ今日はお互い疲れたし、早めに寝るか?)
「そうだな。ステラ、悪いけど先に寝るよ。おやすみ」
「ん、おやすみなさい、アラン。毒消し草ありがとう、本当に助かったわ」
「ステラとおじさんにはいつも助けてもらってるからな。あ、それと夕飯美味しかった、ありがとう」
(ありがとう。アラン、ステラ)
顔を赤くしているステラを微笑ましく思い、俺は深い眠りについた。
決して言葉には出せないが、女神様にも感謝しながら………
人権無視して乗っ取らない憑依だと会話が増えるし、なかなか話が進まねぇ……うん、筆者の実力不足だから仕方ないんだ。読んで下さる方が居たら、どうか広い心で許して下さい。