前進
「アインガングには何年かに1度、ランダムで4つの世界から1人ここにつれてこられます。それを転生人と呼び、保護します。」
で、私はその何年かに1度ランダムで選ばれる転生人に選ばれてドナドナされたのか。
「帰れるんですよね?」
世界を救え!とかじゃないならよかった。まだ楽をできるはず。基本的に動きたくないからね。
でも、好きでここに来た訳じゃない。
だったら帰れるよね?
「わからない」
「……はい?」
「わからない。帰れるのかどうかは」
…なんですか、それ。
頭が真っ白になりました。
頑張って入った大学もコレからが面白いって時で、弟も高校に入学したばかり。
お兄ちゃんは最近出世して本社のある首都圏から戻ってきてようやく、3人で暮らせるようになって嬉しかったのに。
私は勝手につれてこられた上に帰れない可能性もあるってことですか。
「だが、どうにかする。お前が帰りたいのならば方法を見つける。こちらの事情で勝手に連れてきたんだ、そのくらいの礼はするのが当然。それまではここで過ごせ」
「…そう、ですか」
泣いても喚いても無駄だということは理解しています。わかってます。
私にできるのは王様を信じることだけです。
そう思った瞬間に真っ白だった頭は一気に動き出します。
出会って数分の王様を信じるなんて私も軽いですね。まったく。
「お前の部屋は用意する。こちらにいる限り不自由はさせない。…帰る方法が見つかるまでは楽しむことを優先しろ」
言われなくとも楽しみますよ!
異世界トリップなんてそうそうできないんだから。
得したと思ってもいいんじゃないでしょうかね?!私は選ばれし人間なのよ!!
「わかりました。よろしくお願いします王様」
「ああ。…それで、お前名前はなんという」
え、だってまだあなたの名前知らないよ??っていうボケは置いておいて。
「私も名前は教えちゃダメなんじゃないですか?」
「…いや、大丈夫だろう。教えたくないのならいいが」
えー、なんですかその「だろう」って。曖昧ですねぇ。
そもそもなぜ名前を教えちゃダメなんですかね?
「フゥ@転生人 で。」
「ふぅあっと?」
……おふざけが過ぎました。すみません。王様。
繰り返さなくていいです。
「嘘です、ごめんなさい」
「女!!!王に嘘をつくとはなんたる所業!」
このイケボいちいちうるさいですね。
乙女のかわいいお茶目なのに。
これだから器のちっちゃい男は。
「お茶目じゃないですか!頭がお堅いですねぇ……フミカです。名前」
「なっ、頭が堅い?!お前など転生人でなければ即処刑だったのに…っ」
「フミカか。いい名前だ」
イケボさんにそう言い捨てたところ、返事は王様から返ってきました。
いい名前、ですか。
「へへ、ありがとうございます!私も気に入ってるんです!!」
さて。
ここアインガングで思う存分楽しんでやりますよ!!