挨拶
「目を覚ましましたか」
お、さっきのイケボさん。
寝転がっている私の頭上に立ち、そのまま見下ろしています。
「だったらいつまでも寝転がっていないで起きなさい。……はやく!」
「はいいいぃぃ!」
ぽけーっとそのまま寝転がっていた私はイケボが発したその声にビビるように起き上がりました。
すると、少し離れたところに大量の武装した兵士がいて既に臨戦体勢。
てか、ここ、広っ。
起き上がったことで背後になってしまったイケボは私の前に回ってきました。
「……」
イケメンやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
スラリとした長身にサラッサラの髪。鼻も高くて、日本人としてのコンプレックスをモロに抉ってくる。
「なんですか、人の顔をジロジロと。…潰しますよ?」
うわぁぁっ!リアルクール敬語属性キタコレ。
しかもなに、ドS属性もついてくるの?
「…はぁ。あなたが見るべきなのは私ではなく左側にいらっしゃるお方です。早く座りなさい」
そう言われて半ば無理矢理座らされて体の向きを変えられます。
そこは私の座っている所よりも数段高くなっており、高そうな椅子に人が座っていました。
イケボさんもかっこよかったのですが、この人はそれとは違う魅力をお持ちで。
町を歩いたら100人中100人が振り向くはず。
こういうときに語彙力の無さが悔やまれますが、あのイケボさんが氷の様なかっこよさならばこの人は夜の海の様なかっこよさと冷酷さを兼ね備えているようです。
そしてこの人、さっきからずっと見てきます。
無言で。
……これは辛い。
なんかいった方がいいんですか?辛いんですが。
えーと、まずは挨拶ですか?
今の時間がわからない私はさんざん迷った結果、
「………ち」
あぁぁああ、怖いいいいっっ!!
私の小さな声でもこの部屋全体に響いてしまうのではないかと錯覚してしまうほどの沈黙です。
コミュ障にはつらいです。
でも、一度声を出してしまったからにはあとには引けない。なにより、この場にいる人のすべての視線が私に降り注いでいる気がします。
「…ちぃーっす」