オムツかぶれが治りました。
ルーに魔具の鈴なるものを貰ってから、俺の生活は一変して良好なものとなった。
始めはなかなか伝わらなくて苦労したが……そこは公爵家の優秀な乳母!そしてメイド達!!
俺の中で鈴2回はご飯、鈴3回はおしめ交換と決めて、毎日根気よく繰り返した。
鈴を鳴らすと誰かしら来てくれるので、そこで頑張ってふぇっ、てやれば、あとは勝手に推測してくれるようになった。
3日もすると俺方式も伝わり、ご飯ですか~おしめですか~のやり取りが一切なくなり、俺もふえっとやらずにすんだ。
素晴らしい進歩だと思う。
俺のおしりも喜んでいることだろう。
本当にね、オムツかぶれってのは、酷いもんだよ。
世の赤ん坊はさぞや辛い思いをしていることだろう。
せっかく記憶を持ったまま異世界(絶対地球じゃないと思うんだ、オムツが草の時点で)に生まれ変わったのに、おしりが痛痒くて考え事が出来ないなんて。
乳母もメイドも俺の赤くなったおしりを見て紫色の変な薬を塗りたくってたけど、そんなものいいから洗ってくれ~!!って何度思ったか。
もしかしたらあの紫色のヤローも俺のおしりにかぶれを作った原因かもしれないけどな。
とにかくルー様々だ。
悩みが一気に解決したのだ。
俺が次にやるべきことは、今後のことだ。
まだ生後3ヶ月ぐらいか?まぁ、将来設計は早い内が良いと俺は思うんだ。前世を踏まえて。
ケツが痒くなくて、落ち着いて物事を考えられるってのは、凄く大事なことだと思う。
とにかくこの世界について俺なりに集めた情報を整理してみよう。
リトカサル王国ーーーこの世界ではかなり大きく力のある国のようだ。んで、俺の御先祖さんが王様の弟で、権力抗争を避ける為に継承権を放棄してシバス公爵家ができた、と。
俺って皇族の血をひいてるんじゃないか?
ま、政に興味はないが。
現公爵が俺の父。
次期公爵が、俺の兄。
俺は次男だから普通は予備的な感じで兄に何かあった際は出張らなきゃならないのだろう、普通は。
でもきっと、そんなことにはならない。
兄の側には俺の救世主ルーなんちゃらがいるからな!
あの時はケツが限界突破しそうだったこともあり、気にもできなかったのだが……。
この世界には魔法があった。
ルーの姿が俺以外に見えなかったのも、天井裏から瞬間移動したのも魔法らしい。ちなみに俺がいつも握りしめて離さない鈴も魔具と呼ばれる魔法を閉じ込めた道具である。
あの忌々しい紫色のヤローも魔法薬と呼ばれるものらしい。
とにかくなんでもありだ。ここまで何でもありだと自分にも使えるのか気になってくる。
……俺にも使えるのだろうか。
う~ん。万が一失敗しても安全なヤツがいいな。
魔法と言ったら俺に考えつくのは某ゲームのちっちゃい火の魔法だが、本当に出来ちゃったら部屋は火事になって、身動きの取れない俺は焼け死ぬだろう。
そんな危ない道は渡れない。考えること数分。
それならば……と、俺はどのみち喋れないので心の中で念じてみる。
(光を……。)
ぽぽぽぽっ、と蛍火のような小さな柔らかい光がいくつも部屋の中で踊り出す。それは幻想的な、前世では見たことのないものだった。
うぉおおー?!出来たー!めっちゃ綺麗!
俺は感動し過ぎてちょっとチビりながらも、この喜びを誰かと分かち合いたいと思い、鈴を一度鳴らした。