ヒューって意外と小心者。
僕は主の首根っこを掴んだまま城内から出て走った。
全速力で走り続けながら本気で思った。
(・・・マジ殺す)
実は自分でも割と気にしていた黒い仕事着を、こんなちびっこに笑われるのはかなり癪だった。
(あ~、ヒューったら、そんなに照れなくてもいいって!ほら、まだ仕事も終わってないし。とりあえず落ち着こう!話せばわかる!!人類皆兄弟!!)
それでもコイツはヘラヘラと笑って黙ることをしない。
常人ならば耐えられないほどの殺気を身に纏っている僕に怯えもしない。
・・・イライラスル。
転移でどこにでも行けるのに自分に首根っこをつままれて、猫のようにブラブラと運ばれているのだ。
どんだけ僕を信用しているのか。
(・・・ルー、こいつ、得体が知れなさすぎる。)
わかってたはずだった。異世界からの転生者。でも僕は解ったつもりになっていただけだった。
主と定めたコイツは・・・得体のしれない化け物・・・そう、僕以上の。
(あ~。もう、面倒くさいから跳ぶからね!)
・・・はっ?
と思った瞬間、僕はセバス様をつまんだ状態で自分の領地、そして腕組みをしてこちらを無表情で見ている次期頭領ルーの目の前に立っていたのだった。