父が子を止められなかった理由。
儂には息子が二人おる。
長男のアルベルト。
次男のセバスチャン。
二人とも妻に似て顔が整っている。
将来が楽しみでしかたない。
若い頃に結婚した妻との仲も変わらず良好である。
あぁ、幸せとはこういうことなのだと、心から思っていた。
妻から話を聞くまでは。
セバスは本当に可愛い息子だ。
幼いのに一人で大概のことは出来てしまう。
まだ三つだと言うのに。
私と友人の会話に相槌をうちながら黙って聞いていたことがあった。背伸びしたその姿が微笑ましく、私はセバスに言った。
「なんだい、セバス。何かあれば意見を言ってみれば良い。許そう」
「おことばにあまえましておとうたま、ここのけいさんがまちがっているので、さきほどのおはなしとはことなってまいりましゅ。ただしくは………………。」
私は友人と二人、目を見開いて書類とセバスを交互に見つめた。
なんということだ。
セバスは間違いを指摘し、さらに解決案、それに付随する諸問題への対策、その後の領地経営まで、完璧だと思われる策を打ち出したのだ。
まだしっかり言葉も話せないのに!!
お前の頭の中には一体何が詰まっているのだ……。
一通り話がすんだのか、セバスは私たち二人を見つめ、
「おはなしちゅう、よけいなことをいたしました。もうしわけございません。」
瞳を若干うるうるさせて謝罪してきた。
なんてプリチー!
いやいや、駄目だ。
とりあえず落ち着け儂よ。
儂は気合いを入れなおし友人との話を早急に終え、何か言いたげな友人を睨み付けて帰した。
セバスと話をしなければ、と歩き出した儂に声をかけたのは妻だった。