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まさかの隣国事情。その1。

はい。誘拐されました。

2度の人生で初めての経験です。


目を覚ましたら、黒づくめの知らないおじさん(多分。目元しか見えない。)に抱っこされてました。

なにコレ恐い。なんの罰ゲームだ。



最近大体のことが1人で出来るようになったもんだから、付人のヒュー以外は側に誰もいなかった。

魔法を使って自活する俺のことを皆に見せないようにしてたんだな。

主にヒューとルーが。


両親はなんだかんだと顔を見に来てたけど、用事があれば自分から行ってたし。どちらも公務とやらで忙しそうだったけど。


兄ちゃんにはあんまり会わせてもらえなかった。

ルーにも控えるように言われた。

かわいい弟を演じられなければ会うな、……と。

1才の幼児になんて無茶ぶり、ルーよ。

かわいい弟ってなんだ。

子供はみんなかわいいだろが!



ま、そんな生活だったからかな~。

きっと公爵家の中で一番狙いやすかったのね、俺のこと。

間の悪いことに今夜ヒューはルーの所に出掛けている。



だが、しかし!

俺にはなんちゃら嬢(名前忘れた)を撃退した自動修復結界があるのさ!

誰も俺を傷付けられないぜ!



……なぁんて思ってたら、何だか現在進行形で結界のまま運ばれてます。

あれ?結界って触れんの?

ルーは俺の移動の時、結界を解除しろって言ってたけど……。

だから結構楽観視してたんだけど……。

おかしいな、……ってかヤバい。


どんだけ移動したかわからんけど、今どこかの森?の中。

幼児を抱えた黒づくめのおっさんが、絶賛疾走中。


それは建物から一瞬の出来事でした。

俺の部屋→森。

転移魔法ですな。

なんか俺を運んでる黒づくめ、足場とか視界とかいろいろ悪いのにめっちゃ走るの速ぇ~。

今、夜ですよ?!

鳥並の目ん玉持ってるのか?!


でもって揺れる揺れる!

酔うわ~吐きそうだわ~。


…俺は冷静に考える。

今、この結果の中で吐いたら楽になれるが……ムリだ。

完璧ゲロまみれだ。


しかし我慢も限界です。

結界を解除するか、このままリバースするか……。

こんの黒づくめ!

1才の幼児になんつー選択させようとしてんだ!!



制裁魔法、『頭チリチリ』を発動しようとしたところで黒づくめの足が止まる。

チッ。運のいい奴め。

しかし助かった……のか?

ゲロまみれだけは。



俺達の目の前にはボロい山小屋みたいな建物。

俺の持ってるイメージでは山賊とか住み着いていそうな、いやぁな雰囲気。


おっさんは周囲を確認すると無言で小屋の中に入って行く。

結界に包まれた幼児(俺)を抱いたまま。



蝋燭の灯りで照らされた小屋の中。

俺の予想を裏切り、中は小綺麗で、中央のテーブルに着いているのは見た感じ、身なりの良い人間ばかりだった。

だが一様にフード付きの外套を身に纏っている。

1、2、3……何人いるんだ?

少なくとも5、6人の人間の視線が入って来た俺達に集中する。


その視線を無視しつつ小屋の奥に目をやれば、暖炉近くには揺り籠が置いてある。

誘拐してきた俺用かと思いきや、見間違いでなければすでに赤ん坊が寝ているっぼい。

……こいつら子供の誘拐犯グループなのか?



小屋の一番奥に座っていた大男が立ち上がって、俺を抱いていたおっさんに声をかけた。


「ご苦労だったな、ポチよ。しかし何故結界のまま運んできたのだ。これでは……。」


ぶはっ。


吹いちゃいました。

おっさん、名前ポチなの?!それともコードネームかナニかか?!


大男は突然吹いた俺の様子に言葉を飲み込み、吹いて噎せた俺を心配してくれたのか、大男の横に座っていたキツい感じの美人さんが慌てたように俺達に近づいてくる。


「ポチ、子供を乱暴に扱ってないでしょうね?怪我でもさせていたら許さないから!」


そう言って俺をポチのおっさんから救いだし、その柔らかい胸で抱き締めてくれた。

ポチから離れた瞬間一瞬で結界を解除した俺。幸せです。


ポチの表情は読めないが目が面白くないと語っていた。

まーな。ポチ、俺のこと別に傷付けてないからな。

だがポチよ。諦めろ。

俺はおっさんより美人なおねぃさんに抱っこを所望する!


美人の胸の中でキャッキャッとはしゃぐ俺を怨めしそうに見やってからポチが大男に報告を始めた。


「チャトラ様、結界は公爵家内部では解除できず、別行動していたモンキとも連絡が取れなくなった為、やむを得ず一人で戻りました。」


その言葉に大男他数名が息を飲む。


「流石は公爵家といったところか。我々でも犠牲者無しでは難しいということか。ポチよ、この子供は公爵家次男で間違いはないのか?疑う訳ではないが、モンキが連絡を絶った今、奴等が次男を放置しておくのは不自然だ。罠の可能性もある。」


「確かに、追手がかからぬのは不可解ですが、集めた情報によれば次男は1才になったばかりの幼児。銀髪に紫の瞳と、滅多にいない容貌です。付人も1人のみとのこと。部屋に侵入した際、この子供は豪華な部屋で1人寝ておりました。替え玉の可能性はほぼ無いのではないかと。」


「ざ~んね~んでした。」


突如、間延びした声が小屋の中に響き渡る。

誘拐犯の間に緊張が走ったのを肌で感じる。

小屋の入り口にめちゃくちゃ笑顔のイケメンが、戸に寄りかかりながら立っていた。

俺も鳥肌がたった。

あ、ヒュー来ちゃった。

俺は慌てて美人さんの胸に顔を隠す。


「追手などうちの主には不要なので。

セバス様~お迎えにあがりました。

遊びもほどほどにして下さい。

か・え・り・ま・す・よ!」


ちょっと苛立ったヒューが俺に手を差し出すが、俺はイヤイヤと首を振った。



小屋中が沈黙に包まれた。

室温が下がった気がした……。





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