勝ち取った時間。
結論からいうと、俺は1日で家庭教師を撃退した。
結界を張り多分数時間たったと思う。起きたら困り顔の両親がルーと何やら話し合っているところだった。
見える範囲で周りを確認すると、俺の部屋は所々焼け焦げや穴が開いていて、あの女教師の姿は見えなかった。
……俺の部屋でいったい何が?
チリンッと1度鈴を鳴らせば、ルーが俺の方に顔を向けた。
「お目覚めですか、セバス様。……その、風の結界を解除して頂けますか?お部屋を移動してからご説明致しますので。」
大変だ!ルーが、何だか困っている。俺は寝る前に張った膜を取り除くイメージ(面白いから真ん中から割って桃太郎ー!みたいな)をしてから消し去った。
……誰にもわかってもらえなかった。当たり前だけど。
普通に消せば良かったと、少しこっ恥ずかしい気持ちになりながら、大人しくルーに抱かれて部屋を移動した。
「セバス様、ルカンバラス嬢はセバス様の張った結界を壊せなかったばかりか屋敷に多大な被害をだしました。幸い怪我人はいませんでしたが…。ご本人もセバス様を教育する資格が自分にはないと、教育係を辞退致しました。」
「あ~!」
「ですが、代わりをさがそうにも現在ルカンバラス嬢以外に魔法を極めている方もおりません。大変、申し訳ございません。」
「あ~……。」
会話にまったくならんが、俺は、ルーが謝る必要はないと伝えたい。勉強しないと我が儘を言ってあの女教師に抵抗したのは俺だからだ。
ルーが言うには、俺の親に魔法の才能を報告して、その才能を伸ばすべく、ルーの家のツテで、優秀な教師を探しだして連れてきたとのこと。そして魔法において、ルカンバラス以上の人間はいなかったと……。
俺を除いて。
俺の張った結界(ルーがこの間張った風の結界の自動修復バージョン)を壊せず、自身の魔法で屋敷をボロボロにするまで頑張っていたらしいが、魔力がつきたルカンバラスは、寝ながら結界を維持する俺に恐怖をおぼえ、早々に屋敷を出ていったらしい。
何だか申し訳ないことしたなぁ、両親とルー、そしてルカンバラスにも。
寝る前に見た、自信満々な女教師の顔を思い出す。
……ま、いいか!なんか嫌いなタイプだったし!
ご機嫌にきゃっきゃする俺に両親とルーはため息を1つついて、その日以降勝手に教師を連れてくることはなかった。
俺は自由になった時間を、独自の魔法研究に充てた。
まず、身体強化。
首がなかなか座らないので魔力を身体中に満たし強化、風魔法を使って体の周りに見えないクッションを作り、お座りが出来るようになった!
クッション自体は水魔法でも作れたが、体が濡れてしまうため、どっちみち風でコーティングしなければならず、面倒なので風魔法一本でお座りすることに決めた。
次に瞬間移動。
ルーの様に、いきたい場所に移動する魔法だが、これには少しだけ時間がかかった。
風魔法で移動自体は出来たが、(風のクッションに乗って移動するだけ。)この方法だと壁や床などの障害物があるときは迂回しなければならなかった。
ルーは天井から部屋へと移動していたのでこの魔法ではないだろう。となるとやはり空間に干渉する魔法があるに違いない。
俺は試しに闇魔法を発動させた。自分の体を闇に包み込み、空間を渡るイメージをしてみる。……行き先は……う~ん、やっぱりルーのところか?出口で失敗してもルーなら助けてくれるだろ。
俺はルーのことを考えながら空間を渡ったのだった。