セバスチャンが執事になった理由。
ヴァンク家嫡子付き筆頭執事セバスチャン。
これが、今の俺の肩書き。
前職は有名ホテルのフロントマネージャー。
35歳で過労死。
転生し、今に至る。
いや、びっくりしたね。
目の前が真っ暗になって、あれ、停電?なんてのんきに構えてたらすごい衝撃。
床に倒れたらしい。
見えなかったけどさ。
体の鈍い痛みに少しだけ意識がはっきりしたが、暗闇は続いたままだった。
まわりの同僚達の声を遠くで聞きながら、意識を落とした。
後から考えたが、あれが俺のあの世界での最後。
家族や、少ない友人に迷惑かけただろうなぁ。
ま、なんとかしといてくれるだろう、妹が。
そんで次に気がついた?時は今の母の乳を飲んでるところだったもんで吹いたね、盛大に。
乳児特有の吐き戻しと思われたので良かったが。
あの時の母乳が鼻に入った苦しみは今でも覚えているよ。
前世の記憶を持ちながら乳児からのスタート。
なんの拷問かと思ったが。
今は、それで良かったと思っている。
やっと歩けるようになり、言葉を話しても不自然じゃないぐらいには成長した頃、自分のセバスという名が愛称であり、本当はセバスチャンだと知った衝撃も鮮明に覚えている。
その時、俺の人生は決まったのさ。
セバスチャン……この名を持つ者の宿命!
そう、俺は執事になることを……2才だか3才の時に決めたのだった。
「おかあたま、ぼくね、しつじになりたいんだ。」
「何を言っているのセバス?あなたは公爵家の人間です。使用人にはなれないのよ?」
「だっておかあたま、こうしゃくけは、おにいたまがおつぎになられるのだから、ぼくは……」
「セバス、良く聞きなさい。あなたのお兄様が公爵家を継ぐでしょう。その時は、あなたが兄を支えるのですよ?それなのに、使用人だなんて……。」
「おにいたまは、りっぱなかただから、ぼくがいなくてもだいじょうぶだとおもうのです。おかあたま。それよりもぼくは、ぼくのやりたいことをしたいのです」
何年かかったか良く覚えていないが、母を根気よく説得し、時には子供の武器を使い、父も攻略した。そのころには兄は、俺を化け物のように見ていたが。
とにかく俺はこの名前に相応しい職業に就くために前世で培った経験・知識をフル稼働して周りから固め、執事見習いの修行に出してもらえることになった。
この頃には屋敷中の人間が可哀想な子を見る目で俺を見ていたが、気にしないことにした。
俺だって同じように見ただろしな。
とにかくその頃の俺は、セバスチャンという名前の執事になると、それ以外に道はないと思い込んでいた。
今考えると馬鹿らしいが。
だが、後悔はしていない。
6月30日
誤字修正しました。
8月13日
矛盾点修正しました。