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ブロックワン―イージービレッジ―

「そいつへ近づくな!」

 俺は村へと向かい歩きながら、諷太に聞く。

「なぁ、召喚数はどうやって回復する?」

「ああ、戦う時に全回復するね」

 その答えに驚愕する。

「それだけか……?」

「うん!」

「マジかよ……」

 つまり、俺は誰かと闘わなければ、諷太以外の守護者を呼び出せない。そして、諷太以外の守護者を呼び出せなければ、この世界の事をより知る事が出来ない。とは言っても、諷太と同じ知識しか持っていないかもしれないが。

「守護者が質問をして、それを返せるぐらいの知能を持つのは、召喚数をどれくらい振り分ける必要がある?」

「3くらいかな」

「なるほど」

 クソ。難易度が高すぎる。

 初心者の俺が勝てる相手として、まず相手にも初心者を選ぶ必要があるし、ただ倒すだけではなく、召喚数を最低、3は残しておかなければならない。

 そしてなにより。

「村遠くね?」

「うん。遠い」

 どういう事だ?

 ここはドームの中の筈だ。あそこはここまで大きくは無かった。という事は、外側から距離を錯覚させているのか? だとしたら、随分面倒な事をしているのだな。そして、その仮定が当たっているのなら、ドアがあった方向に走って意味が無かったのも、頷ける。


 30分後。

「やっと着いた」

「疲れたね」

 俺達は村の前でそう言い合うと、村へ入る。

 ここで、誰かと闘わなきゃいけないのか。

 すると、一気に人が押し寄せる。

「ねぇ、君、ここの事教えてあげるよ」

「情報を教えてあげるから組織に入ってくれない?」

「ここの事を教えてあげるからさ」

 各々が勝手な事を言う。

「じゃあ、その人と話をします」

 俺は眼の前の人を指差して言う。

「よっしゃ」

 俺に指差された人はそう言い、

「えぇ~」

 とごねる人たちに、

「いいから、がって下さい」

 と言うと、端の方へずれた。

「ご用件は?」

 同い年くらいに見える相手へ聞くと、相手も返す。

「用件は、この世界の情報を教えるから、組織へ入ってくれないかって事だ」

「組織?」

「それは秘密だな~」

 俺はその態度にいらつくと、さっき勧誘してきた人達へ言う。

「誰か! 組織とやらについて解説してくれる人はいませんか? 入る事を検討したいのですが」

 すると真っ先に一人の少年が近付いてきて言う。

「あ。組織って言うのは複数人でグループを作って協力し合う人達の事だよ」

「協力しあう? 多対一の戦闘が可能なのですか?」

「うん。それに、情報の共有とか、装備のトレードとかもしやすいよ!」

 多対一の戦闘が可能、か。それが一番の驚きだな。そして、装備のトレードという言葉が出てくる辺り、武器があるのだろう。

「なるほど。ですから、組織に入れば色々と教える、と?」

「うん」

 すると、ぞろぞろと人がまた集まって来た。

「諷太は何か知ってるか?」

「いや、何も知らない」

 すると、初めに俺と話していた人が、

「おい、交渉してるのはこっちだぞ」

 と途中で俺に説明してくれた人に言う。

 なるほど、恩を売って組織の一部に取り入れようって訳か。しかも、多分これは入ると色々な制約がかけられる。つまり、入ったら面倒な事になる。

 だが、それと同時に、こいつが下っ端だと言う事も予測出来る。

 強い奴がスカウトするか? それは考え辛い。それなら。

「落ち着いて下さいよ。闘いませんか? 俺と。それで入るか見極めますよ」

 勝てば断る理由にもなるな。

 すると、男は二ヤリと笑い、言う。

「ああ。良いぜ」

 そりゃ、来たばっかの俺からの挑戦だ。乗るだろうね。

 どうせ戦わなきゃいけないんだ。ここで戦闘の知識も積んでおく必要がある。一番嫌なのはこいつが強い武器を持ってるかもって事くらいか。

「あ、でも、一対一ですよ?」

「分かってるさ」

「とは言っても、信じるには根拠が足りませんね」

「大丈夫だ。互いの合意があれば、そのルールは破られない」

 その言葉を聞いて、横にいる俺に組織の事を教えてくれた人へ聞く。

「そうなんですか?」

「うん」

 すると、男は突然言う。

「行くぞ! 解放!」

 俺も真似てみる。

「え……。か、解放?」

 どぎまぎしながら言うと、諷太は感想を言う。

「禄。ダサいよ」

「うるせぇ!」

 ただ、ダサいという自覚はあります。

 すると、辺りは明るくなり、見えなくなる。


 眼が眩んで、眼を閉じ、開けるとそこは夕暮れの森だった。

 ……へ? な、なんだここは? 夕暮れってのは同じだけど……。

 ――諷太は闘わせられない。

 その思考がよぎるが、闘わさせは出来ないものの、現状は説明してもらった方が良いだろう。

「諷太! 召喚数ワン

 そう言うと、召喚数1で諷太は出現する。

「バトルフィールドだ。今回は山。視覚にはあまり頼れないね」

 諷太がそう言うと、俺は言う。

「戦闘の度、毎回変わるのか」

「うん」

 なるほど。となると、今回はラッキーだったらしい。森なら、遮蔽物は多い。

「敵の位置は?」

「不明」

 そりゃそうだな。

「なるほど」

 とりあえず、守護者を2体、出しておくか。

 うーんと、水色ショートヘアの女の子と、黒色ウルフヘアの男の子しよう。てか、その想像通りになるのか?

「守護者ツー! 召喚数ワン

 俺が叫ぶと、横に水色ショートヘアの女の子と、ウルフヘアの男の子が現れる。

 すげぇ! だが、喜んでいる暇はないか。

「とりあえず、隠れるぞ」

 俺が言うと、諷太と他二人の守護者は声を合わせて「了解」と言った。

 声まで想像通りだ。


 茂みに隠れると、諷太は小声で言う。

「禄。とりあえず、自分を召喚数で強化した方が良いよ」

「俺を?」

「うん。今は君もプレイヤーだ」

「なるほどな」

 どうやら、戦闘中は召喚数で俺も強化できるらしい。俺が負けたら、即終わりだろうから、そのアドバイスは良い。

 残りの召喚数は9。俺と相手では、戦力差は多少ある筈だ。普通に正面から戦ったんじゃ勝ち目は無い。

 まず敵を早く見つけたいが、こればかりは運だからな。

 探しに行くより、一箇所で待つ。


「よし、作戦は今言った通りだ」

「オーケー」

 小声で言うと、敵を発見する。敵は守護者一体だけだ。敵プレイヤーは見当たらない。

 やっと見つかった。そう思うと、諷太はウルフヘアの男に手振りで――事前に作戦は説明しているので、それだけで十分なようだ――敵の守護者の迎撃を頼む。

 諷太もウルフヘアもショートも、召喚させた時から武器を持っていた。諷太は剣、ウルフヘアは槍、ショートは弓を。諷太はさっきまでは召喚しても持っていなかったのだが、ここに来てから召喚すると、武器を持つようだ。

 ウルフヘアは敵の守護者を後ろから不意打ちする。槍で一突きすると、敵の守護者はウルフヘアの襲撃に気付き、対応する。その敵の一撃はとても強く、ウルフヘアは一気に劣勢になる。

 ――不意打ちしても劣勢になる所を見るに、敵の召喚数が高いのか?

 更に、他の敵の守護者が現れ、ウルフヘアに攻撃しようとする。諷太はショートに命令すると、ショートはウルフヘアに後ろから攻撃しようとしている守護者を射抜く。矢は命中したものの、大したダメージは与えられなかったようで、敵は少し怯んだだけだった。

 すると、ショートへ向かって、矢が飛ぶ。それは誰にも当たる事は無かった。矢を飛ばした者を見つけようとみるが、木が邪魔で見えない。

 今の威力なら、ショートと同じくらいの速度だったから、ショートへ矢を飛ばした敵の守護者に割り振られた召喚数は3より下だろう。

 そう予測すると、俺はそこへ向かう。

 召喚数が3以上ないと、独自の判断は出来ないと諷太は言っていた。では命令通りの行動なら出来るのか? その問いの答えはイエスだ。そう、つまり、命令しなければならないのだ。そして、命令するには近くにいる必要がある。威力的に考えてあの矢を飛ばしたのが3より下だと考えれば、そこの近くにはある程度の確率で、プレイヤーがいる。勿論、俺のように協力者(諷太)に頼めば別だが。

 プレイヤーを倒せば、俺の勝ちだ。

 俺は弓を持つ敵兵へバレないように近付くと、そこに、プレイヤーはいなかった。

 弓を持つ敵兵が言う。

「プレイヤーだ! 守護者よ! 皆こちらへ来い!」

 どういう事だ? 顔を見る限り、こいつはプレイヤーじゃない。それに、一体いくつの召喚数を割り振れば、プレイヤーか守護者かを識別し、叫べるのだ?

 ――いや。

 一つの可能性を忘れていた。こいつは、協力者か。

 諷太は協力者だけはどの召喚数でも知力は変わらないと言っていた。なら、こんな事も出来るのか。


 好都合だ。


 一番嫌なのは、こいつの近くに恐ろしく高い召喚数をにえに出された守護者か協力者かプレイヤーがいる事だが、まぁ、それが無い事は分かっていた。ウルフヘアとショートに俺が割り振った召喚数は一だったが、それにしたってあそこまでの差がつくのなら、相手の二対の守護者は三程度の召喚数で割り振られているのだろうから、その時点で相手は六程度の召喚数を使っている。更にこの協力者に最低一使っているのだ。

 なら、俺の勝利は確実だろう。なぜなら、俺に勝つには相手は元々、十五以上の召喚数を持っている必要があるのだから。

 そう思うと、俺は敵の協力者を諷太から預かった剣で斬る。俺に斬られた敵は空気へと昇華した。

 ウルフヘアを倒した敵の守護者二人が、俺に近づいて来る。先程言った協力者の命令を守っているのだろう。

 こいつら、分かってない。

 俺は、こいつらの協力者を一撃でほふったというのに。まさか、協力者に割り振られていた召喚数が低いから可能だと考えているのだろうか? バカだ。

 近付いてきた敵二人の内一人をショートは射抜く。そしてまた、当たるものの怯むだけだ。その敵が怯んでいる間に、もう一人の敵と俺は斬り合う。そして、俺の一撃で守護者は空気へと昇華した。

 もう一人の守護者は後ろから俺に斬りかかるが、俺はかわして斬る。五の召喚数の差が無ければ、ここまで一方的にはならなかったろうに。

 俺に割り振った召喚数は、八。

 こいつらじゃ、倒せない。

 更に隠れていた二人の敵兵向かってくる。ああ。命令通りだな。なにせ、「守護者よ! 皆こちらへ来い!」と言ったのだから。

 独自の判断ができるって事は、こういう事にもなる。

 せめて。せめてこの敵が無駄に守護者を召喚するのではなく、最初に出した二対の守護者に六、召喚数を与えていれば厄介だったのに。

 このままでは負けると踏んだのか、敵プレイヤーは飛びだして言う。

「そいつへ近づくな!」

 バカが。

 そして、赤い髪の少年が弓を持っているのをイメージしながら言う。

「守護者1。召喚数1」

 そして現れた少年。

「借りるぞ」

 俺は言うと、その少年の弓と矢筒から矢を一本取ると、弓を引き絞る。

 俺の行動に気付いた敵プレイヤーは逃げようとするが、召喚数八のいつのより筋力のついた俺は、そのプレイヤーを着た装備の上から弓で撃ち抜いた。

 俺の眼の前に『セレクト』という文字と『装備』、『アップポイント 十』という文字が出てくる。『装備』という文字の下には『アタックブレイカー 六』と書かれてある。、とりあえず俺は『アタックブレイカー 六』という文字に触れると、その文字は消え、『アップポイント 十』は『アップポイント 四』という文字に変わった。

 なるほど。つまり、装備を手に入れたいのなら、アップポイントはその装備の強さ分、手に入らず、また装備を手に入れないなら、代わりにアップポイントが手に入るという事だろう。

 すると、諷太とショートが近寄ってくる。諷太は言う。

「アップポイントってのは、買う時とかに使えるよ」

「そうか」

 そして俺は『アップポイント 四』という文字を押した。


 また辺りが光で包まれると、元の村へ戻った。

「では、俺に負けるような組織に入るのはやめておきますね?」

 俺はそう言うと、足早に立ち去る事にした。後ろから、「おい、ちょっと待て」とか聞こえてきてからは走って逃げる事にした。俺と同じくらいの速度で、諷太やショートや赤髪も走った。

 建物に隠れて追跡を逃れると、やっと一息吐く。

「ふう。疲れた。しつこいなぁ」

「うん」

 辺りを見回して、言う。

「ここ。人通りが多くないか?」

「うん、何かあるのかな?」

「行ってみよう」

 人の流れのままに進むと、先には店があった。

「なんだ……ここ?」

 俺達は入ると、中の店員が「いっらしゃい」と言う。

「なんです? ここは」

「ここは宿屋だよ。一部屋2アップポイントね」

 まぁ、さっきの戦いでもう夜だし、泊まる事にするか。

「じゃあ、一部屋で」

「はい、これ鍵ね」

「ありがとうございます」

 何かの手続きをした訳ではないが、俺のアップポイントは減っているのだろう。残りは二か。

 鍵を見ると、204と書かれてあるので、二階だろう。

 階段へ向かおうとすると、多くの人が俺を見ている事に気付く。思わず吐きそうになるため息を抑え込んで階段へ向かおうとすると、声をかけられる。

「よぉ、あんた。すごいな」

「またスカウトっすか?」

 俺は呆れた眼で見ると、男は首を振った。

「いや、ここでスカウトはしねぇのが暗黙の了解だぜ。俺は単純にすげぇと思ったのさ。来たばっかで勝っちまうなんてな」

「そーすか」

 そう適当に返事をすると、二階の部屋へ向かった。

 見るからにモブキャラだな、と俺は思った。

投稿が遅れてすみません。

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