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シールズのやさしさ
セリエアは、自分から口を開くことは無い。会話が続かず、沈黙が支配をするのだ。
「この子に髪の手入れをさせよう。いつまでもそのままじゃいけない」
バラを持ってきた使用人に目配せをすると、セリエアの後ろに立たせた。
一度、シールズの事を見た使用人のメイドはシールズが首を縦に振ると、何も言わないセリエアの髪をとかし始める。
髪をとかしている間、シールズはずっとセリエアの事を見ていた。何もやろうとしていない目。髪をとかすこともせずに、ずっと部屋にこもりきっている。
話によると食事もろくにとっていないらしい。
髪をとかされる時の彼女は、何も言わなかった
髪を整え終えると、メイドはシールズの事を見た。
普段はキザな事を言っているというのに、こういう時には何も言う言葉が思い浮かばない。
シールズは自分のふがいなさを呪いながらも、精一杯に考えてこれだけの言葉を搾り出したのだ。
「何かして欲しいことがあるならいつでも言ってくれ」
「ありがとうございます」
シールズの言葉は、セリエアの力の無い言葉で返された。後ろ髪を引かれる想いであったシールズは、そのままセリエアの部屋を出ていった。




