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侍の世界
広いドア。二人が一緒になってさんに座っている。
そこは大きい窓で、リミラと春火が二人で向かい合わせになっても、十分な広さがある。
「あの陸の上に見える木って桜かい?」
遠くに見える木。小高い陸の上に一本の大きな木が存在していた。
「なんかの花だった記憶はあるね……」
どうでもよさそうにして言うリミラ。リミラは、春火に渡されたワインの注がれたグラスを指でつまんで、クルクルと回して弄んでいた。
「僕らの世界では。桜はとても綺麗な花ってされてるんだ」
侍の世界では、『桜の花の下、杯に桜の花びらを浮かべて酒を飲む』それが最高の風流とされていた。
「ちょっとやってみたいと思わないかい?」
昼間に見たあの木には、茶色い枝に桜の花の桃色が見えていた。
だが、遠目に見ても、まだ満開ではないようである。
「明日くらいに行ってみようよ」
桜の満開の時期は短い。時期を逃すとまた来年の開花まで花を見ることができない。様子を見ると、チャンスの日はもうすぐのようである。
「行ってみようかな」
リミラは、答えた。
「それじゃあ明日だ」
春火は、花見の約束を取り付け、ワインを一つ傾けた。




