厄介なもんだい
シビリオスは、下を向いたまま兵士に引っ立てられていった。
表情の見えないセリエアはその姿を見つめていた。このときになっても、セリエアは昔からの経験で、自分の顔に貼り付けられた表情を変えなかったのだ。
昔から、王宮の複雑な政略に巻き込まれ続けてきた彼女は、がむしゃらにやってきた。
右も左も分からず、誰も信用できず、何度も裏切りにあった。だが、幸か不幸か、彼女には政略の世界で力を見せる才能が備わっていたのだ。
セリエアはうまく世を渡り、気付けば皆から一目を置かれる存在になってしまっていた。
昔からセリエアの事を見ていたシールズは、その事を知っている。だからといって、彼女に同情をした事はなかった。
今まで、シールズとセリエアは敵同士で、隙を見せたら、自分の方がやられるのだ。
だが、今はすこし状況が違った。
今はセリエアの敵ではない。『すこしくらいは、気をかけてもいいか……』そう考えが過ぎり、シールズが声をかける。
「セリエア。シビリオスにに聞いてみたい事はあるかい? 代わりに僕が聞いておくよ」
シールズは、無表情のセリエアに向けて聞いた。
いつも、氷のような冷たい表情をしているシールズだが、いまは少しばかり人間味のある表情をしていた。
セリエアの目をのぞきこみ、微笑みを浮かべた顔をしている。
バルテがそれを見て言う。
「そんなまどろっこし事をしなくても、あいつをここまで引きずってくればいいだろう」
シールズはメガネを直す。バルテは、シールズが何で怒っているのかわからず、まゆをひそめた。
いつもの冷たい表情をしながら、シールズがバルテに向けて言う。
「君はそんなんだからいけない。女性に気を使う事も覚えたほうがいいよ」
「俺なりの気の使い方だ。これから、あいつが『何刑』を受けるかぐらい分かるだろう?」
シールズは、またメガネをかけなおす。
セリエアは表情を変えない。だが、だからこそ、セリエアがこの事態にどれだけショックを受けているか分からないのだ。
そのセリエアの前で『何刑』と言ったバルテ。
シビリオが受けるのは『死刑』以外の何物でもない。バルテは、死ぬ前に一目でも合わせてやるほうがセリエアのためになるのだと思っているのだろう。
「それも間違いとは言わない。だが、会うかどうかはセリエアに決めさせるべきだ」
シールズが言うのを聞いて、バルテはセリエアを横目でみた。無表情で何も様子の変わらない姿に、面倒そうに目を細める。
「お前の言う事も一理ある」
厄介な問題だ……そう思いながら、バルテはシールズとセリエアを交互に見た。




