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バルテとセリエア

 セリエアは、憂鬱な顔で王宮の廊下を歩いていた。

 力なくフラフラと歩くセリエアは、これから自分の部屋に帰るところである。そこに、バルテが声をかけてきた。

「いつまでも黙ってるつもりか?」

 振り返ったセリエアは、ふと疲れた顔を見せた。皆の前では表情を見せないように、無表情で通していたのだが、一人でいるときまでそうしているわけでもない。

 バルテは、セリエアが人には見せない弱った顔を見て、小さく嘆息をした。

 やっぱりこいつも女だ……バルテは頭の隅でそう思う。

 バルテにとってセリエアは、普段は小憎らしいくらいに明晰で、自分にとっても目の上のたんこぶのような存在である。

 今の彼女は、悩みを持ち、どうする事もできずに不安で押しつぶされそうになっている姿であるのを、バルテは分かっている。

「足掻くから辛いんだ。俺が楽にしてやる」

 バルテは、自分はセリエアに優しい言葉をかけるような立場ではないし、そんな関係でもないと思っている。

 これは自分のためにやっている事だ。たまたまセリエアのためにもなるだけ。

 礼なんて求めていないし、怨みたければ、怨めばいい。

 弱ったセリエアを見て、胸に浮かんだもやもやを打ち消すためにそう考えたバルテは、セリエアに話を持ちかけた。

「暗殺事件の黒幕を明かす。重大発表だ。場所を用意してくれ」

 セリエアはバルテとは違った人脈がある。

 多くの人を集めて、人が集まっているところで、自分の成果を披露しようというのである。

 こう言えばセリエアは分かる。全部用意をしてくれるに違いない。余計な話はあまりしたくないバルテは、それだけを言ってセリエアの前から去っていった。

『面倒だ……』

 バルテは、自分が犯人を明かせばどうなるか? 考えながらガラにも無く憂鬱な気持ちでいたのである。

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