夜の動き
夜遅く、人が通らない使用人達の生活スペースの通路の壁が、ギギギ……と、軋んだ音を立てて開いた。
真っ暗で何も見えなかった場所がランタンの光で照らされて、石の壁の姿が見える。
ここに彼らを手配した人間の言ったとおりであった。この時間にこの通路を使う人間などいない。
男に渡された見取り図は頭に叩き込んである。
体中に布を巻き、ブカブカのマントをはおり、特殊な形をした剣を持つ人間達の姿だ。
全員で五人。
目標の場所に向けて、黒ずくめの男達は走り出した。マントがたなびくが、たなびく動き方が重く見える。
マントの裏側に、暗機を仕込んでいるのだ。
最初にその男達の侵入に気付いたのは、見張りをしている騎士であった。何人もの男達が廊下をかける音を聞き、姿を確認したら、すぐに警備用に警笛を鳴らした。
『エリオン王子が暗殺されかかった。これだけでも不祥事である。これ以上の問題を起こしてはならない』
これは騎士団長から常々言われていた事であった。
一般の騎士は、自分達の騎士団に暗殺の嫌疑がかけられていることすらも知らない。
セリエアだって、騎士団が怪しい事をあからさまに公言する事はできないし、していなかった。
騎士団長も、働く騎士達に向けてそうやって叱咤激励をしておかなければならないのは、当然のなりゆきである。
警護の騎士は、その言葉を忠実に守った。




