親愛の証
「私はいつもあなたのそばにいます。私はあなたの事を見えないところから守り続けるのです」
春火は、その脇差を眺めながら言う。
「君が守ってくれるなら心強いね」
セラシュはその言葉に驚いた。春火は何にそんなに驚いているのかと首を傾げたが、その事には何も聞かなかった。
「少し素振りをしておくよ」
春火が言った後、セラシュは城に戻るためにきびすを返す。
「ありがとう! 大切にするよ!」
小さくなっていくセラシュの背中に、春火は声をかける。セラシュは、振り向いてちいさく会釈をしてから、先へと歩いていった。
セラシュは、馬に乗りながら、ぼうっとした気持ちでいた。
そのセラシュの後ろから、馬で追いかけてくる者がいた。
「いいもんを見せてもらったね」
「いつからそこにいたのですか!」
リミラがクスクスと笑いがら、帰りの道を歩くセラシュに馬を寄せてきた。顔をにんまりと笑わせながら言う。
「あれなら知ってるよ。自分の名前を刻まれた剣を贈るのは『愛の証』なんだよね」
本来、自分の名前の刻まれた脇差は、女性の騎士が愛する相手に贈るためのものである。
愛の告白の意味を持つ物だ。
「『親愛の証』なんて嘘をついて渡しちゃうところがかわいいね]
セラシュは、胸が苦しくなって、自分で自分を抱きしめた。
「初めてこんな感覚を感じました」
セラシュは、どうしようもなく苦しい感覚にさいなまれた。いくら呼吸を繰り返しても、いくら胸を押さえても、この感覚は消えない。
何をやっても効果がなく、胸をちりちりと焼く感覚から逃げることができないのだ。




