セラシュの贈り物
春火は、剣を降り続けた。
森の中から、人がこちらにやってくるのに気付く。
リミラが思わせぶりな事を言っていたので、どれほどとんでもない人物がやってくるのだろうか? と思っていたのだが、姿を見て、春火は拍子抜けをした。
「おや……リミラが言うから覚悟をつけていたけど……」
「リミラ様が何か……?」
やってきた人影は、セラシュであった。
剣を振りながら、セラシュを迎える春火は、セラシュの様子がどうも変だというのに気付く。
いつも腰に刺している剣を抜き、鎧も取り外して、鎧の下にいつも着ている、服だけでやってきているのだ。
髪にヘアバンドをかけて、髪型を整えている。
「変ではないでしょうか?」
慣れないかっこうをしているという感じがする。しきりに髪留めを触って気にしていたり、服の裾を手で握ったりをしていた。
「そんな事はないよ。すごく似合ってる」
「そんな……そんな事を言われても嬉しくありません」
セラシュは、下を向いて小さい声で答えた。普段の、凛々しいともとれる姿からは想像できないようなしぐさだ。
「難しい子だね」
セラシュが何でそんな事をしているのか分からない春火。
「春火様。あなたに渡しておきたい物があります」
セラシュは、持っていたものを春火に向けて差し出した。
「なんだい? かしこまって」
セラシュが春火に渡したのは、刃渡り40センチの脇差程度の大きさの剣であった。
春火は、柄に文字が刻まれているのを見つけた。
「この柄の名前には意味がありまして……」
騎士の間では、自分の名前を刻んだ脇差を贈る事は親愛の証なのだという。




