この国の事
ザーザーという、滝の落ちるすがすがしい音。
湖ともいえるほどの広さの川があり、そのほとりに、木が散在する林。いつもの訓練をしている春火の姿がそこにいた。
あれから厚手の服を手に入れ、それを武道着として使っているのだが、春火の様子を窺っているリミラにはそれが不評である。
「なんで水に濡れても透けない服を着ているの?」
「君が見ているからだよ!」
綿を何重にも織り込んだ厚手の服では、リミラが望むような、体に吹くがピッタリと張り付いた濡れ姿などは見られない。
錘の付いた木刀を振る春火。その様子を横で見ているリミラの姿がある。
リミラは春火の訓練の様子を、よく覗きに来る。何のつもりか? 何を考えているか?それは分からないが、春火としては、じっとりとした目で観察をされると気分が休まらない。
「一国の王女様が、こんなところ一人で来てしまって大丈夫なのかい?」
「王女って言ってもね。外国に嫁に出す大事な体ってわけでもないからね」
「シビリオスと、幸せな生活をする事が決まっているんだね」
「まあそうだね」
王女は、外国に政略結婚に出される事がほとんどである。生まれた瞬間から夫になる人間が決まっている事がほとんどだ。
だが、リミラはそれには当てはまらないらしい。
春火は、セリエアがエリオンに向けて授業をする時にこの国の事情は聞いていた。
非常に肥えた土地をもっており、農作物の育ちも良く、水は潤沢で、海につながる広い平野を持つ。
海は温暖で、栄養が豊富で魚の数もおおい。
国が力を持つのに、必要な条件が揃いすぎており、資源に恵まれている豊かな国だ。
だが、周囲の国まで同じように豊かというわけではない。
貧しいわけではないが、この国の状況が恵まれすぎている。この、好条件の揃った土地を奪おうと考える国は少なくない。
だから、このアレンファルドは軍備に重くを置いた。
隣国は、山の向こう側にあるため、国境に近い、山の麓に首都を置いて外国に睨みをきかせているのだ。




