変態セラシュ
その後、春火は自分に当てられた部屋のベッドに体を横たえていた。
「汚された……汚されたよぅ……」
あれから浴室に連れて行かれた春火は、引っぺがされるようにして服を脱がされ、引きずられながら浴室に連れて行かれた。
体を洗うと称して散々体中を三人から弄ばれ、解放されたときは、すでに春火の目に力がなくなっていた。
ベッドの上で、寝返りをうって、天井を見上げる。
数年前まで、春火は姉達からお姫様のように扱われていた事を思い出す。
「あれは、ここまではひどくなかったけど」
苦笑をする春火。あの時の姉達の行動には彼女らに似た部分がある。
自分の中から湧き上がる感情を満たすために、可愛がる。春火自身も、子犬や子猫を見たとき、同じような感情を感じる事が多々ある。
だが、それは自分勝手な感情の押し付けにすぎない。好きとか、愛しているだとか、そういうものは綺麗なものであるが、それが全て相手に伝わるものではない。
「子供なんだよな、あの子らは」
だからこそ、時には引いたりする事も必要だ。それを分からずに全力でぶつかっていく彼女らは、愛し方をしらない子供のような印象があった。
次の日、日が昇るとほぼ同時にセラシュが春火の部屋に入ってきた。
春火の部屋は、白を基調にした清楚な感じの部屋である。机と椅子、ベッドと化粧台。
その他は、特に存在感があるわけではないが、この部屋の雰囲気にぴったりの絨毯が敷かれているくらいだ。
これはセリエアの部屋と雰囲気が似ており、彼女が家具を選んだ部屋であるのが分かった。
「もう、目を覚ましておられましたか」
セラシュが言う。春火は部屋の中で、朝日を見つめながら椅子に座っていた。
「君らが近くにいるんだからね。一瞬だって気が抜けないさ」
「それはいけませんね。安心してくつろいでいただけるために、私は誠心誠意警護をしているのです。私達の事を信用していただけませんか?」
「信用……ね」
それは、他の意味もあるだろう。この国に居つくことを決心してほしい。与えられた役目を受け入れて欲しい。彼女らの勝手でこの世界に呼び出された春火にとってすれば、身勝手な申し出に他ならない。そう考えたのを隠して、春火は会話を続ける。
「おはようのキスとか言って朝からセクハラキッスを受けそうなんだけどね」
「むしろ、朝食をいただいてもらいます。私が口移しをしますので、それでお召し上がりになっていただきますよ」
「どんだけ変態なんだよ君らは!」
「朝の快適な目覚めに加え、朝食をとる事までできます一石二鳥の方法ではないですか」
セラシュには何を言っても無駄だ。そう考えた春火は、椅子から腰を上げた。
「本の一つや二つは欲しいね。朝日を見るのは嫌いじゃないけど、ずっと見つめ続けていたいわけじゃない」
「今日中に用意をさせます。朝の散歩の時間です」
昨日、説明を受けていた。一日のスケジュールは決められている。