シールズの場合
シールズは、シャルテと会っていた。二人は使用人の廊下で話をしている。
石作りの壁と床に囲まれ、構造上袋小路になっている、廊下の奥である。
「いつもありがとう。これは今回のお礼だよ」
シールズは手提げ袋をシャルテに渡した。それを無造作な動きで受け取るシャルテ。
中には、高価なマフラーが入っていた。シャルテには、それを受け取るのが完全に当たり前になってしまっている。
最初は遠慮や、後ろめたさというものがあったのだろう。だが、少しずつもらい続けていると、その感覚がマヒしていくのだ。
それは、シールズにとっては望むところであった。
金なら自分は持っている。情報を手に入れられるなら、いくらでも金は払うべきだ。情報一つが、金には変えられない利益になる事もあるのである。
だが、最近はどうもシャルテの様子がおかしい。シールズはさぐりを入れてみる事にした。
「セリエアの様子はどうかな? 何か困っていることとかはないのかな?」
「得に変わりはありません……」
「……もめごと一つ起こっていないのかい?」
シールズは、すでにバルテがセラシュを切り捨てた事を知っていた。あれは、大きな動きのはずだ。
「セリエアの近くにいる騎士には何か動きはあったかい?」
メガネを直すシールズ。いらだっている時などにやってしまう、シールズの癖である。シャルテはそれに気付いていない。シャルテは、呆けた声で言った。
「いえ? 何も……」
シールズは、眉根を寄せた。
「君はセリエアの事が分かるのかい?」
ビクリと身を震わせるシャルテ。
「どういう事でしょうか……?」
身をこわばらせて返すシャルテ。シールズは、メガネの奥の瞳を光らせた。
「こんな所に居たの!」
廊下の方から声が聞こえてきた。
「シャルテさん! こんな所で何をやってるの! 早く手伝いにもどりなさい!」
一人のメイドが声をかけてきた。
「君は?」
シールズがそのメイドに声をかける。すると、一つ礼をしてシールズに返答をする。
「私はキッチンメイドのヴィラです」
「君らは同僚なのかい?」
シールズが聞くとヴィラは答える。
「はい。三日前からシャルテは私と一緒に働いています」
「キッチンメイドって事は……」
メイドには、役割分担がされている。キッチンメイドというのは王宮で生活する人間の料理を一手に引き受ける役割の事である。
セリエアの専用のメイドとは違う仕事である。
「つまり、君はもうセリエア付きのメイドからは外されているって事だね……」
もうすでに、シャルテはセリエアの動向をさぐる事はできなくなっているのだ。
「もう用は終わったよ。邪魔をして悪かったね」
シールズは、シャルテにはもう用はない。この一言にはシャルテとの決別の意味もある。
「三日も気付かなかったのか……うかつだったな……」
シールズは、自分の捜査力の低さを愚痴りながら、次の捜査に戻っていく。




