本当の自分
「いつもの私ですか……?」
春火が言うのに、セラシュがうめく。木刀のひんやりした感覚が首元に当たる。それが、セラシュの頭を鮮明にしていった。
いつもは自分はどのような剣を使っていただろうか? 思い出す。
いつもは、自分は他の男にも負けないように、力任せに戦っていた。よく自分の師範にも、『女が男相手に、力で対抗しても、限界がある』と言われたものだった。
だが、自分は自分の戦い方を貫き通した。師範が言うのも聞かず、力まかせに戦ってきた。それで負ける事になったところで、自分の戦法を変えたりはしない。
自分の意地は絶対に曲げない。バカな方法だとは言われる。だが、そんなものには耳を貸さない。それがいつもの自分であった。
セラシュは春火の剣の切っ先に自分の剣の切っ先を当てた。
セラシュは、左足を前に出し、剣を下げる。
剣の切っ先は後ろに向け、体を低くしてから春火に向けて飛び込んだ。
セラシュはその姿勢から剣を振り上げ、春火の剣をたたき飛ばす。さらに、セラシュは肩から春火にタックルを仕掛け、春火の事を押し倒した。
セラシュは、倒れた春火の喉元に、剣の切っ先を当てる。
「上手く動けてたね」
倒された春火は、うれしそうにしながら言った。
「稽古をつけてくださって、ありがとうございます」
セラシュは木刀を春火の胸の前に移動させる。春火がその木刀を持つと、セラシュは木刀を引き上げ、春火の事を助け起こす。
「頼んだのは僕のほうさ」
自分がセラシュに教えたことを誇るわけでもなく、恩着せがましい事を何一つ言わない春火は、セラシュから見るとまぶしいくらいに快活な笑顔を見せたのだ。




