気付いたセラシュ
セリエアの部屋。
感じのいい装飾のされたこの部屋の中で、セリエアに向けて頭を下げているセラシュの姿があった。
セラシュは膝を突き、顔を上げることができない。王に向けて失敗を報告する騎士そのものの姿である。
春火とリミラとエリオンは、気を使ってセリエアの部屋を出ていた。部屋にいるのは二人だけである。
「まだ早い段階で気付きましたね。少し遅れていたら、どうなっていたか分かりませんよ」
セリエアはニコリと笑っているものの、セラシュにはその笑顔は恐ろしいものだ。
少し遅れたら、本当にどうなっていたか分からない。セリエアは、セラシュの事を完全に見限っていたかもしれない。
今、セラシュは首の皮一枚でつながっている状態であった。
「まだ取り返しの付かない事態ではありません。私の私兵を二人の護衛につけましょう」
「申し訳ありません……」
それ以外に何を言えばいいのか分からないセラシュは、ずっと、頭を上げることができなかった。
全員がそろったところで、セリエアが今回の事のまとめに入る。
今回に起こったことを、セリエアは皆に説明した。
その中でも、自分のやった事が、すべてセリエアに筒抜けであった事を聞くと、肩を落としたセラシュ。
「今回の種明かしをしましょう」
エリオンに授業をする時のような様子で言う。まずは、バルテがやった事がなんでセリエアにばれたのか?
「よく彼が使う手なんです」
セリエアが言った。セラシュは驚いて目を見開いた。
セラシュは思う。
どういう事だろうか? あれは、自分がうまくやっていたはずなのである。相手からいくつもの情報を聞き出し、成果をあげたはずだ。それなのに、自分はバルテの手にまんまとはまったのだと、セリエアは言う。
「まず、相手に自分の弱みを見せる。『実は自分はバカである』とか、『間違った情報ばかりを持っている。まったく事情をつかんでいない』とかそう思わせるんです」
そのために、バルテは、紋章の描かれている問題の武器を、わざと『剣』であると言ったのだ。本当は、バルテは『斧』であるのは分かっていた。
小さな間違いを見せる事によって、セラシュに、バルテには隙があるように思わせたのだ。
「そして、セラシュがバルテ様に隙を見せるように誘うんですよ。そして、自分は情報を小出しにして、関係を続けながら相手の情報を聞き出すんです」
「そんな事はありません! 私が優位に話を進めていたはずです。有効な事だってあったではないですか!」
「大抵は過去に起こった事件の事を言っただけ。あとは、シールズ・サイラーン様の悪い噂くらいではないですか」
セラシュが思い返してみればそうである。関係のあるかもしれない事。関係のありそうな事。未確認の情報。そういった微妙な事ばかりである。
核心に近づくような情報はまったく無かった。しかも、ライバルのシールズ・サイラーンを蹴落とすための情報もある。
「利用していると『思わせられた』のですね。本当は利用をされていたのです」
きっぱりとセリエアは言う。
それからも、セリエアの講義は続いていった。続いていくにつれてどんどんと肩を落としていくセラシュ。
それが終わる頃になると、セラシュは完全に意気をなくし、フラフラしながらセリエアの部屋を出て行った。
春火はそれを追って出て行く。




