獅子身中の虫
「今回セラシュは独断行動を取りました」
実はセラシュが独断でバルテと会っている事は、すでにセリエアは見抜いていた。
自分達の枠の中から一人ではみ出して別行動を取っている。これは、軍隊でいう斥候や偵察といった役割のようなものに見えるかもしれない。
「……ですが、今の場合は軍隊とは事情が違います」
斥候や偵察は、敵に捕まる危険がある。もしも、捕まってしまったときのために、斥候、偵察には重要な情報が教えられていない。本部を揺るがしてしまうかもしれないような、重要情報を持っているのは、結局は士官のみだ。
「だからこそ、斥候や偵察をだす事ができます。ですが、今やっている情報戦は、それとはまったく異なるのです」
全員が情報を共有し合って、全員で考えている。さっきの例えで言えば、全員が士官なみの情報を持っているのである。
一人がそれを敵に漏らしてしまえば、こちらの全ての考えが相手に伝わってしまう。そうなれば、砦の弱点や、兵の数。これから決行される作戦の概要。全てが伝わってしまうのである。
そのため、全員で意思を確かめ合って、一丸になる気持ちで挑まなければならない。セラシュのように、一人で先走って手柄を狙う者が現れる事になってはならないのだ。
「ここまでが、『セラシュに懲りてほしい事』の概要です。分かりましたか?」
「つまり、セラシュには、一人で勝手に行動をするのはこれに懲りてやめてほしいって事だね」
「その通りです」
セリエアは続ける。
セラシュが独断行動をとっているのを見て、セリエアは行動を起こした。単に、新しい情報を取り入れる事そのものを止めたのだ。
「今、手に入っている情報は、書類にまとめておくように言ってあります。私自身も一度も目を通していません」
「それは本末転倒なんじゃぁ……」
セリエアの言うとおりでは、何も捜査ができないという事でもある。エリオンが言うが、今は授業中というのがあるのだろう。嫌な顔一つせず、エリオンの言葉に答える。
「獅子身中の虫の駆除を優先しました。情報を整理して考えるなど、後にもできることです」




