男の子が妃ってのはどういう事!?
豪華な装飾に、光り輝く調度品がいくつも飾られた部屋。一言で言えばキンピカの部屋だ。
そこに、騎士と分かる質素な服装をした女性が、今年で三十になるこの国の王妃に向けてかしずいていた。
にこりと笑ったこの国の王妃は、優しく語りかけた。
「私の息子のエリオンの花嫁の護衛騎士に、あなたを任命します」
元来、女性騎士は、女性の要人の警護に付けられるために生まれた役職である。
本懐の中で、最重要の仕事を任されるに至ったこの女性騎士は、精悍な顔を上げ眉を絞った。
「大命を預かり、恐縮でございます」
セラシュは、強い意志をこめられた目を王妃に向け、腰の剣に手をかけた。
「こらこら」
妃は、優しい瞳をしながら、やんわりとセラシュをしかりつける。
「そんなに気を張っていてはいけませんよ。肩の力を抜いてください」
セラシュの肩に手を置いた妃は、肩をもみ始めた。
「私の息子の最愛の人を、よろしくおねがいします」
妃はセラシュに部屋を出て行くように命じると、セラシュはきびきびとした動きで部屋を出て行った。
セリエアの部屋には、天井に輝くシャンデリアに感じのいいインテリアがある。
その部屋の中で、セリエアとリミラに向けてかしずいているセラシュの姿があった。
「リミラ様。セリエア様。エリオン王子。お初にお目にかかります。私はこのたび、妃様の護衛係りに任じられました、セラシュと申します」
儀礼的にセラシュはセリエア達に頭を下げて挨拶をする。
そして、ベッドに寝かされている姿を見た。
「問題の方ですか……」
セラシュが護衛をする事になった、妃の姿だ。
今はまだ眠っているが、起きたら瞳は大きく開かれることだろう。あご元は中性的で、男としても女としてもいけるような顔立ちだ。
「どう思いますか?」
セリエアはセラシュに聞いた。セラシュは言葉を選ぶようにして考えた後、形のいい口を開く。
「なかなか可愛い娘です。王子の妃様でなければマークをかけているところでした」
たまらずエリオンが声を上げた。
「言葉を選んだ末に出てくる感想がそれ!」
エリオンの事を無視し、セリエアはやわらかく微笑をしながら答える。
「そうですよね。一目見たときからこの子は『イケルっ』って思いました」
「何言ってんの! そんないい笑顔で言うようなことじゃないからね! 何なのさ、『イケルっ』って何をする気なの! どこに行く気なの!」
それを無視したセリエアは、視線をベッドの上で眠るエリオンの妃に戻した。