訓練中断
春火は、その日の訓練を中断し、すぐに他の四人と一緒になって城へ帰った。
「もう少し訓練を続けていてもよかったのですが……」
セリエアが残念そうに言う。
「やる気になれるかい!」
セリエアに向けて怒鳴りながら言う春火。セリエアは、また残念そうにして言う。
「汗を流すさわやかな姿を見せてもらいたかったのですが……」
「それを君らに見られるのが嫌だから帰るんじゃないか!」
自分の姿を見て、変な妄想をされるなんて、考えるだけでも身の毛がよだつ。
この連中に、ねばっこい目で練習を見守られるなんて、迷惑な話であると、春火は心から思うのである。
城門の前にまで着くと、馬に乗っている人影が見えた。
外から帰ってきたばかりという様子のシビリオスであった。その後姿に最初に声をかけたのはリミラだった。
「シビリオスさーん」
声に気づき、振り返ったシビリオス。
顔色から疲れが見えた。それでも、声に応えて微笑みかける姿は、健気にがんばっているようにも見える。
前に進み出ていくリミラとセリエア。その後ろでセラシュは、シビリオに向けて刺すような視線を向けながら言う。
「雑務でお疲れですか?」
「こらこら、またセリエアに怒られるよ」
春火がセラシュの行動に釘を刺す。いかにも、シビリオスの事を疑って、さぐりをかけているのが分かる様子であったのだ。
それで、セラシュはドキリとして体をこわばらせた。
シビリオスは、それで苦笑をしてから言った。
「皆様雑務とは言われますが、これらはとても大切な仕事です。自分に直接の利益が無いからといって、敬遠されている。こういう仕事を経験なされないと、先々になって困る事になるのは、自分自身ですよ」
言っている事はもっともだが返事になっていない言い様である。
『こりゃ、疲れてるなぁ』
春火は思う。頭がぐちゃぐちゃで、返事の言葉を選べていないという様子だ。
「シビリオス。君、寝てないの?」
疲れの色の見える顔のシビリオスは、またも微笑を浮かべた。
「お恥ずかしい。昨日は一睡もしていないのですよ」
それは、第一印象として、顔にはりつけてある微笑だと感じた笑顔そのものだ。
「早く休んだほうがいいよ」
リミラが心配した様子で言う。
「ご心配かけます」
そう言い残したシビリオスは、王宮の中へ入っていった。




