秘密の抜け穴
王宮には、誰も知らない抜け穴がある。使用人スペースの廊下の、四角い石がむき出しになっている壁の一部をひっくり返すと、外から中に向けて掘られた穴につながるというものだ。
夜遅くに、外からその抜け道を使って城の中に進入をする人影があった。
城壁の外にある森の中。その中にある大きな木の根元に、ここにつながる穴がある。その人影は、周りをランタンの光で照らして今の位置を確認した。そのランタンも、光の窓が一方向しかないもので、前を照らしても、自分の姿は照らさない特殊なものだ。
夜になると、城の一階にあるこの場所は、光がまったく無くなる。
昼間でも、松明を灯して明かりを点けねば真っ暗になる場所だ。ただの通路として使われているだけのそこは、真っ暗な夜中に好んで使う人間もいない。
位置の確認を終えると、その人影はその抜け穴から外へと戻っていく。
その壁は、中からカギをかけることができ、留め金を上げるとしっかりと壁が固定をされる仕掛けだ。
カギをかけたその男は、穴を通って森の中にある出口へ向かっていった。
春火が馬に乗って王宮の縄文から出ていく。
馬の腰には小さな袋が釣り下がっており、日帰りの外出の量である。
「あの日から、外に出歩くようになりましたが、何をやっているのでしょうね?」
セリエアが言った。門から姿が見えなくなったのを確認すると、セリエアは春火に気付かれないようにして後ろをつけていく。
その日、春火は、いつものセリエアの部屋で、本を読みながら過ごしているところであった。
「外に出る許可を出しましょうか?」
「へえ……いいのかい? 僕が逃げ出しても知らないよ」
元より、自分の意思に関係なくここに連れてこられた春火である。最初は逃げ出そうとまでしたのだ。
今の様子を見るに、春火はここの生活に馴染んでいるようにも見えるのであるが、まだ、諦めたと決まったわけではない。その様子を隣に座って見ていたリミラには、軽率な行動に思えた。
「観念したとまでは思っていませんが、他に行くあてがあるとも思っていません」
リミラがそう疑問に思っているのを見透かしたようにして、セリエアが言う。




