バルテの語り
内容は、シビリオスがいかに、昔から品方向性であったかという事だ。
何度も王から仕事を預かり、些細な仕事にも全力で応え、真面目一辺倒で生きてきた事を強調する話ばかりであった。
「……ですが、彼は一年前にいきなり見聞を広めると言って旅立ってしまいます。リミラ様と仲がよかった事や、王からの信頼も厚かったこともあり要職に就く事は決まっているようなものでした。みんな、彼が一回り大きくなって帰ってくることを願って、笑顔で送り出したものです。彼が出て行った後、彼が受け持っていた雑務を誰が引き受けるかで、一時もめましたが……」
バルテが、額に手を当てながら「あのときは大変だった……」と言った。
セラシュは、いくら聞いてもシビリオスの事を疑う余地が見当たらないのに、悔しくなった。
セラシュの勘は外れていたのだろうか? このまま、引き下がるべきなのだろうか?
彼女にとって、シビリオスの件で一度もめてしまったからには、それを挽回するようなものが、一つでも欲しいところであった。
『これでは、私は恥をかきっぱなしではないですか……』
そう考えているセラシュ。そこにバルテが言い出した。
「セリエア様はしっかりと捜索をなされているのですか? いまだに新しい発表一つありませんよ。このままでは犯人に逃げられてしまいませんか?」
「そんな事はありません。捜査はしっかりと行っています」
セラシュはそれに釣られて言う。バルテはさらに言い出す。
「セリエア様はエリオン王子に付きっきりでまったく部屋の外に出られていないという事ですよ。捜査などしている時間があるのですか?」
「完全に付きっきりというわけではありません。エリオン様の護衛は、私と交代でしていますし、セリエア様が部屋におられる間も、お仲間の魔術師様が捜査の任に当たっています」
セラシュがそう言うと、バルテはいきなり声のトーンを一つ小さくした。
「へえ……交代で……仲間にやらせている……」
それを聞くとセラシュの背筋に悪寒が走った。
セラシュは、何か言ってはならない事を言ってしまったように感じた。さらに、バルテは聞いてくる。
「そのお仲間の名前は分からないものですかね?」
これにも、悪いものを感じたセラシュ。
「捜査情報についてはお答えできません」
教範どおりの言葉で応えたセラシュ。バルテの様子が気になって彼の事を見たが、当然ながら、彼の様子は別段変化はなかった。




