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シビリオスという男

 三部 疑うのは身内から


 短く切った白髪が揺れる。端正な顔立ちに精悍な印象の青年だ。

 バルテやシールズのような豪華な衣装ではないが、十分に高級であると分かる服。王宮の廊下を歩くと、すれ違ったメイドが彼の後姿を振り返って見た。

 彼そのものに華麗な印象があり、王宮を歩く人間にしては地味な服を着ていても、この場所にいるのにふさわしい印象がある。

 その彼は、セリエアの部屋のドアの前に立ち、ノックをした。


 質素ではあるが、品のいい部屋。

 セリエアの部屋の中にはセリエアとエリオンとリミラと春火がいる。

「どなたですか?」

 ノックの音に答えたセリエアが言う。春火はドアの前まで歩いていった。

「お久しぶりですセリエア様。シビリオスでございます」

「春火。開けてください」

 まるで、驚いて反応をしたようにして、即答でそう言ったセリエア。

 セリエアがこんな反応をとるなんて、誰なんだろう? そう思いつつも、春火はドアを開けた。

 春火から見ても美形と分かる顔立ち。中性的な顔には、感じのいい微笑が浮かんでいる。

 荒っぽい印象は無い。だからといっておとなしすぎる印象も無い。誰もが好青年を認める男だろう。

「妃様ですか。どうもはじめまして。私はシビリオスと言います」

 丁寧に礼をしてきた青年は、春火に向けて言う。

「お美しいお妃様ですね。エリオン様が本当に羨ましい」

 春火はそれに微妙な顔をした。元は男であるというのを、シビリオスは知っているのであろうか? 春火自身は、『美しい』などと言われても嬉しくはない。

 だが、社交辞令であるのが分かっているため、春火はそれなりの返事をして答える。

「ありがとうございます」

 春火の返事に対し、ニコリと笑って答えるシビリオス。その笑顔はどうも、春火には顔に貼り付けてあるような笑顔に見えた。

「私はエリオン様の母違いの兄になります。今回の件でエリオン様の事が心配になり、様子を拝見させてもらうため、伺わせていただきました」

 シビリオスが言う。つまりは、この男にも王位の継承権があるという事だ。

「エリオン様の様子はいままでと変わりません。昨日も、食事をお召し上がりになりました」

「変わりません……ですか」

 今の春火の言葉に何か不満があるかのようなシビリオスの言葉である。

「あの……何か?」

 春火は聞いてみると、シビリオスは笑顔を苦悩しているふうに歪めて答える。

「命を狙われたというのに様子が変わらないというのも、問題ではありませんか?」

「そうでしょうか……」

 春火は曖昧に答える。だが、シビリオスの言葉も、もっともである。エリオンにはもっと気を引き締めておいてもらわねばならないだろうと春火も思う。

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