バルテはこうする
騎士団の宿舎は、門のすぐ近くにある。
門から出入りをする人間を監視するようにしてこの場所に作られており、門から入ってすぐ横側に立つ宿舎には、ガラス張りの窓がびっしりと並んでいた。
春火はその様子を見て目を細める。
騎士団は国を守るための組織である。その騎士団が、この国を次に背負って立つはずの、エリオンを殺そうとしたという事実は、彼らの存在意義に反するものなのではないだろうか?
「国のため……か……」
もっとよく、深く、春火は考える。
エリオンが次の王になるのは国のためになるのだろうか?
あの気弱なエリオンが次の王になると考えると、不安になるのではないだろうか? あの王子が王様になってもろくな事にならないと考えるかもしれない。
問題の根本はエリオンにあるのだろう……
春火はぼんやりとそう考えた。
宿舎の中から威勢のいい声が聞こえてくる。
『団長! 話がある!』
この声は忘れもしない。ざんばら髪のバルテ・ヴィランドの声であった。
『なんだその俺の腹を探るような言い方は! 何か隠しているのか!』
続けて声があがる。宿舎の中はとんでもない事になっているようであった。
「これは……」
あまりの事に春火は唸る。今、バルテ・ヴィランドは団長に苛烈な追求をかけているのだろう。
「セリエアは、これが狙いだったのか……」
バルテ・ヴィランドに騎士団が怪しい事を伝えた。そうすれば、バルテはこうやって探りに来る事を予想していたのだ。
この場にいるのがきまずくなった春火は、この場から逃げるようにして去っていった。




