バルテとシールズは、その時
昼間であるが、まだ東側に太陽が傾いている時間。
王宮の廊下で、二人の人間が顔を突き合わせている。赤い絨毯が敷かれており、壁には数メートルおきに絵画と飾りつけ用の鎧が置かれている。天井と壁にも模様が描かれており、その反対側は彫刻をされた柱が並ぶ。その先には、庭師の手入れした花が、綺麗に立ち並ぶ庭が見えていた。
「シール……あれからお前は自分の無実を晴らす証拠が見つかったか?」
「君こそどうなんだい? 鍛冶屋をあたった結果、骨を折った以外に何かがあったのかい?」
バルテ・ヴィランドと、シールズ・サイラーンの腹を探り合うような会話の応酬である。
二人は、何も成果を得られないでいた。暗殺事件の犯人を見つけようものなら、それは自分たちにとって、大変な成果になる。後の出世にも影響がでてくるだろう。
お互いに、犯人が相手でなくても、犯人探しをする理由は十分にあるのである。もちろん、相手が犯人であれば目の上のたんこぶが消えるという役得もある。
お互いに腹を探りあい、お互いにまだ何もつかんでいないという事を感じると、二人はまた、お互いの事を探りあう会話を始めた。シールズが言う。
「これからどうする? 僕に任せて君は身を引いたらどうなんだい?」
「お前に任せたら、俺に濡れ衣を着せかねん。評判の悪いお前が動くと回りが迷惑をするぞ。お前こそ、おとなしくしたらどうだ?」
言ったところで、手を引くわけがないのは、お互いに分かっている。お互いに、お互いを刺すような視線で見る。バルテが口を開いた。
「お前はこれからどこを探っていく? どこになら証拠があると思う?」
「……セリエアかな……」
セリエアが自分たちに向けて言った事だけで全てとは思わない。まだ何か証拠を隠しているに違いない。二人の考え付く事はまったく同じであった。
バルテは憎まれ口をききながら、シールに背を向けて言う。
「待っていろよ。次に会うときは、犯人にしてやるからな」
「君こそ、言い逃れができないようにしてあげるよ」
お互いに背を向けて王宮の廊下を反対方向に向けて歩いていった。




