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お風呂に入りながら

 円形の風呂に湯が張られている。湯船の広さは直径十メートルほどになり、大理石でできた壁が周りを四角く覆っていた。床のタイルには、幾何学模様が描かれており、部屋の隅にはこの国の神をかたどったような彫像が置かれている。

 ここは城の風呂場であり、湯船に今、春火が浸かっていた。

「お邪魔するよ」

 そこにリミラの声がする。

 春火のすぐ隣に座ってお湯に浸かったリミラは、春火に話しかけた。

「言うのが遅れたけど、お兄ちゃんの事ありがとう。一人で盗賊を撃退しちゃうなんてすごいね。もしかして、前の世界では軍人だったの?」

「僕自身は柔道をやってたくらいだったよ」

 それから春火は話す。祖父は旧日本軍の軍人。父も海上自衛隊に属している。家には母と四人の姉がいるだけだったから、男手は春火一人だった。

 祖父は、今時冬の朝には乾布摩擦をしたり、冬の海に入って寒中水泳などもやる、元気な老人で、春火自身もよくそれに付き合っていたのだという。

「君は意外と豪胆な育ち方をしたんだね……」

 祖父は、軍隊に所属していた頃の銃器や武器を今でも所有していて、春火も小学生の頃にはそれを振り回して遊んでいたのだという。

「だからだろうね。あんなボロい武器突きつけられたぐらいでは、怖くもなんとも無かったんだ」

「だからってあれは無謀すぎるよ」

 素手で武器を持った男達に立ち向かった胆力は褒められたものではあるが、やはり、リミラとしてはそれを捨て置くわけにはいかない。

「危ないことをするのはこれくらいにしなよ。君は肉体労働をして体をすり減らす人間じゃないんだからね」

 リミラはすぐ隣で座る春火に言う。湯気でよく見えなかった春火の顔を見ると、春火はリミラの言葉に眉根を寄せていた。

「リミラ……その言葉は聞き捨てならないな」

「どの部分が? 適材適所ってものがあるでしょう?」

 リミラの言う事は、当然の事である。人には向き不向きがある。自分に合った場所で、自分の力を思う存分発揮するのが一番であるというのは周知の事実だ。

 春火は、それを聞いて何か一言あるようだ。

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