城内の事情
「こいつは誰だ?」
椅子に座った後、春火の事を見たバルテがセリエアに聞いた。シールズが口をはさむ。
「噂の、異世界から来たエリオンの花嫁だろう? 君の家には情報が届くのが遅いようだね」
「なっ……その情報なら知っている! 誰か? と確認をしただけだ!」
隣に座った二人は、座ってからもお互いに角を突き合わせる。
「今回の件で事件が起こった頃の事からお話をしましょう」
それからセリエアが話したのは、騎士団が怪しいという話だ。
騎士団の守護しているはずの場所に盗賊が侵入した事。問題の斧を渡してきたのは騎士団だった。斧が綺麗過ぎるため、すりかえられた可能性も大きい。
エリオン王子の毒殺まで行われそうになった事も話した。
「そこでエリオンがいなくなってくれればよかったのに。王位継承権第二位を持っている犯人を捕まえれば、僕に王位継承権がめぐってきたんだけどね」
不謹慎な事を兵器な顔で言い出すシールズ。それを、バルテはギロリと睨む。
「まだ俺を犯人扱いするつもりか!」
セリエアが話し終わった後も、懲りない二人はまた始める。バルテが言う。
「今、俺は町中の鍛冶屋をあたって、斧の事を調べている。尻尾を捕まれる前に、自分から尻尾を見せれば命だけは助けてやるぞ」
「僕は君みたいに、進化しきっていない生物とは違うんだ。捕まれる尻尾も見せる尻尾も持っていないよ」
「数日中には、お前は反逆者のキツネと呼ばれているだろうさ。ふっさふさの尻尾の毛を全部抜いて筆の毛にでも使ってやる」
二人の口論の最中に、セリエアが口をはさんだ。
「お二人が捜査に協力をしてくださるならば心強いのですが……どうでしょうか? 手に入れた情報を皆で共有しませんか?」
そう言うと、二人はそろってセリエアをにらんだ。
「俺の事を犯人扱いした上に、ここに来て利用しようってのか? バカにするな」
「僕もその申し出は断らせてもらう。僕は自分のために行動をするだけだ」
そう言い、二人はお互い敵意のある目線をくばせ合いながらセリエアの部屋から立ち去っていった。
二人が去り、静けさを取り戻したセリエアの部屋の中で春火が言う。
「確かにリミラの言うとおりだ。バルテ君はバカじゃないね。シールズ君も腹黒い」
そして、セリエアに視線を向ける。
「そして、セリエアも図太い。クセ者だらけだよ。この城は……」
春火の言いように満足して、笑みを浮かべるセリエア。混迷する王宮の事情は、誰も把握することのできないほど複雑なものであるようだ。




