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騎士団の糾弾

 騎士団に連れられ、盗賊が自殺をしたという牢に案内されたセリエアは、現場に着くなり注意深く回りを観察し始めた。

 盗賊が毒を入れていたビンを、手のひらで掴んで取り上げる。

「どうして気づかなかったのですか?」

 そう、ここまで案内をしてきた若い女性の騎士に質問をした。

「はい?」

 セリエアが自分に向けて悪態を付く理由が分かっていない騎士は間抜けな声をあげた。

「盗賊がこんなに大きなビンを隠し持っていて、どうして気づかなかったのか? と、聞いているんです!」

「私の口からはなんとも……」

「なら、答える事のできる者に連絡をしてください」

「全員多忙で連絡が取れなく……」

「そう言うように言われたのですか?」

「え……あの……」

「どうせ、自分の部屋で『私が帰った』という報告が来るのを待っているだけです! 今すぐ連絡をしてください!」

「今は本当に連絡が取れなく……」

「本当に連絡が繋がらないか、一度試してみてください」

「……はい……」

 セリエアの剣幕に押され、若い女性騎士は一度礼をしてから、逃げるようにしてセリエアの前から消えていった。

 十分以上後になり、副団長がセリエアの前にやってきた。

「なぜ十分もかかったのです?」

 呼び出してから十分以上かかった。待たされたセリエアは、始めにその事について言及をした。

「私も忙しいのです。案内をする者をあまり困らせないでいただきたい」

 セリエアに対し、非難をしながら答えた副団長は、ふかぶかとかしずいた。

「彼女を羊として私に差し出したのはあなたではないのですか? 態度が荒くなってしまっているのには謝りますが、あの子が言われた言葉は、本来ならばあなたが受けるべき言葉であったのは理解しておいてください」

 セリエアに怒られるのが分かっていたから、部下にセリエアの相手を任せて自分は安全な場所にいたのだ。いけしゃあしゃあと、セリエアを批判したのに、セリエアはまた腹を立てた。

「私の応対をする事は、あなたにとっては仕事ではないのですか?」

「決してそんな事は……」

「重要度の高い仕事にはそれなりの役職の人間を用意するものです。魔術師や騎士に限らず当然の事ではないのですか?」


 セリエアが使っている部屋で、リミラが口元を歪めて言う。

「うわぁ……辛辣……」

 セリエアが牢の様子を見に行く姿を、魔法の鏡を使ってセリエアの部屋に残った四人は見ていた。

 とことんまで相手の非を攻め立て、小さな事にまで文句をつける。明らかに悪意を持った物の言い方だ。

「けど悪いことしているわけじゃないよねぇ」

 春火が言う。リミラと春火は共に獲物を狙う獣のような目をしていた。

 戦いというものにはただの物理的な攻撃のし合いというもののみではない。こういった、外堀から埋めていって精神的に攻めたてていくというのも戦いの一つの形でもあるのだ。

 権力争いという名の、高度で醜い戦いの形がいまここにあった。

 今回の犯人は一体誰か分からない。だが、騎士団が関与をしているのは明白だ。

 だから、騎士団をつついて真犯人を探っているのだ。だが、探っているのを気づかせてはいけない。相手に逃げられないようにしなければならない。敵を追い詰め、その上で追い詰められている事に気づかせてはならない。逃げられたら元も子もないのだ。

 騎士団の人間を執拗に糾弾しているのにはその狙いもある。

 騎士団は黒幕の手駒だろう。その手駒に疑いの目がかかっている時は、黒幕本人は『自分は安全である』と思うはずだ。大きな声で騎士団を糾弾しながら、なんらかのボロを出すのを待とうというのである。

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