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13話 神の一指

 森が震えていた。


 ダンジョンの入口。


 そこから現れたのは――


 巨大な竜。


 黒い鱗。


 赤い瞳。


 翼を広げれば森を覆うほどの大きさ。


 古竜。


 この世界でも滅多に現れない災害級の魔物だった。


 カイルが震える。


「……無理だ」


「こんなの勝てるわけがない」


 だが。


 ルクスは楽しそうだった。


「すごいね」


「本当に竜だ」


 神の青年が横で苦笑する。


「普通は感動する前に逃げるんだけど」


 ルクスは竜を見上げた。


「観光だし」


 古竜が咆哮する。


 グオオオオオオ!!


 衝撃波。


 木々が揺れ、枝が折れる。


 カイルは思わず耳を塞いだ。


 だが。


 ルクスは平然としている。


 竜の瞳がルクスを捉えた。


 魔物の本能。


 理解していた。


 危険な存在。


 古竜が口を開く。


 魔力が集まる。


 神の青年が言う。


「ブレスだ、本物だよ」


 次の瞬間。


 黒い炎が吐き出された。


 森を焼き尽くす竜の吐息。


 だが。


 ルクスは指を一本上げた。


 そして。


「止まれ」


 その一言で。


 炎が――


 空中で止まった。


 カイルの目が飛び出そうになる。


「……え?」


 炎が動かない。


 時間が止まったように。


 竜が混乱する。


 そしてルクスはその炎を見て言った。


「綺麗だね」


 パチン。


 指を鳴らす。


 その瞬間。


 炎が――


 消えた。


 完全に。


 跡形もなく。


 カイルは膝をついた。


「……意味わかんねえ」


 神の青年は笑っていた。


「だから言ったでしょ」


 ルクスが続ける。


「別世界の神だって」


 古竜が怒る。


 巨大な翼を広げる。


 地面が揺れる。


 そして突進。


 森が吹き飛ぶ速度。


 カイルが叫ぶ。


「逃げろ!!」


 だが。


 ルクスは逃げなかった。


 ただ。


 一歩前に出る。


 そして。


 竜の額に――


 指を置いた。


 トン。


 軽い音。


 その瞬間。


 世界が揺れた。


 ゴォォォォォォ!!


 古竜の体が地面に叩きつけられる。


 巨大な体が土にめり込む。


 森に衝撃波が広がった。


 カイルは呆然とした。


「……は?」


 竜が。


 たった一撃で。


 地面に伏せている。


 ルクスは首をかしげた。


「強いね」


 古竜はまだ生きている。


 だが。


 完全に動けない。


 神の青年が笑う。


「今の、力どれくらい使った?」


 ルクスは少し考えた。


「うーん」


「たぶん」


「一万分の一くらい」


 カイルが叫んだ。


「ふざけんな!!」


 ルクスは笑った。


「でも」


「そろそろ終わりにしよう」


 ルクスが竜を見る。


 優しい目だった。


「君」


「帰る?」


 古竜の瞳が揺れる。


 魔物でもわかる。


 勝てない。


 ルクスは手を振った。


 すると。


 竜の体が光に包まれる。


 巨大な体が消えていく。


 ダンジョンへ。


 元の場所へと送り返された。


 静寂。


 森に静けさが戻る。


 カイルは震えていた。


「……なんなんだよ」


 ルクスは振り向いた。


「楽しかったね」


 神の青年が頷く。


「観光らしくなってきた」


 その時。


 ルクスの耳が動いた。


「ん?」


 森の向こう。


 松明の光。


 人の声。


 神の青年が苦笑した。


「あー…、まずい」


 カイルが聞く。


「何が」


 青年が指さす。


「村人」


 ガルドたちが森へ向かっていた。


 オーガ騒ぎで警戒していたのだ。


 カイルが青ざめる。


「見られるぞ」


 ルクスは少し考えた。


「うん」


「それは困る」


 そして。


 ルクスが指を鳴らす。


 パチン。


 次の瞬間。


 森が――


 元通りになった。


 折れた木。


 抉れた地面。


 全部が。


 完全に。


 何もなかったように。


 カイルの頭が追いつかない。


「……は?」


 神の青年は笑っていた。


「神の基本能力」


「世界修復」


 ルクスは笑う。


「じゃあ帰ろう」


 そして。


 何事もなかったように村へ歩き出した。


 カイルはその背中を見て思った。


(こいつ)


(本当に神なんだ)


 そして。


(俺)


(とんでもない奴に喧嘩売った)


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