悪魔の口は硬く、手は抜け目なく
「お呼び出しありがとうございます。秘密厳守の悪魔です」
もくもくと立ち上る煙の中から姿を現した悪魔は慇懃に礼をするとそう名乗った。悪魔を呼び出した男は自分の身を守る魔法陣の中から悪魔に向けて質問を投げかける。
「お前は代償を捧げればどのような秘密であっても必ずバレないようにしてくれる。間違いないな?」
「はい、その通りでございます。代償のお支払い方法も寿命に生贄、死後に魂でお支払いと各種取り揃えておりますよ」
にこやかな表情で答える悪魔に向かって男は満足そうに頷くと、寿命で支払うと答えてバラされたくない秘密を口にした。
仕事を終えて地獄へと戻った悪魔は馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「まったく、人間ってやつはどいつもこいつも。やれ浮気だの小さなちょろまかしだの、だれでもやってるようなことを後生大事に秘密にして寿命を支払うんだから。まったくばかばかしい」
そうして悪魔は契約で決められているより少しだけ多く取った寿命を自分の貯蓄へとこっそりと加えた。