練習
「は〜いありがと〜ね〜」
「大精霊どのはやらぬのか?」
「あ〜たしかにねぇ..ピロリロリロリ〜ン大精霊ペアリ様ダゾ♡わたくしは、みんなの練習をお・つ・だ・いさせて頂いちゃいま〜すよろしくね!」
先程まで真面目なペアリしか見ていなかった3人がポカンとしている中、クレタリアが口を開く。
「なんで自己紹介だとそうなる!ほんっと面白いなぁ〜」
腹を抱えて笑うクレタリアを横目にラナリアが話を進める。
「じぁみんな、自分の楽器から教え合おうか。私はファゴット低音楽器です。」
「うちは〜テナーサックス!」
「わらわは、クラリネットじゃなぁ〜」
「私は〜フルート〜」
4人が楽器を胸の前で持ち紹介をする中、クレタリアとペアリの口喧嘩が止まない。
「ちょっとお姉ちゃん?早くして。」
ラナリアがキレ気味にクレタリアを呼び小走りで焦りながらクレタリアが輪の中に入る。
「え、えーと私は、パーカッションです!」
「ん、ありがと」
数秒後先程の騒がしい雰囲気とは裏腹に静かな空気が流れる。すると、全員が一斉に
「いや、何するの!?」
「あぁ〜説明していませんでしたねぇ〜」
先程までクレタリアの後ろでねちっこく文句を言っていた人とは思えないほど的確に説明を始めた。
「まず、あなたがたには基礎練習をしていただきます。スケール(音階)、リズム、それぞれの調の楽曲など様々な基礎練習です。それがなんか、色々かいてあるやつを配りま〜す」
ペアリが5人に薄い教本を2冊配る。
「この教本の基礎、楽曲以外をまずは完璧にしていただきま〜す!」
「え...?これ、全部...?」
この教本は薄いとはいえ、1ページごとにぎっしりと書かれていることと、2冊もあることから、驚いた苦笑いで、教本をめくる。
「まぁ、今日はやる事もあるのでぇ〜3時間ほどでいいですかねえ〜それでは!わたくしは2階に居ますのでご自由に来てくださ〜いね〜それじゃっ!」
それだけを言い残し、素早くその場を去る。
「ま、まぁ始めるしかないっしょ!やろやろ!」
そういいながらフィンエが教本を見ながらテナーサックスを構える。それにつられて、全員楽器を構え、教本とにらめっこし、産まれたての子鹿のように進んでいる。
月影サロンに100年以上ぶりに音が響く。くしくも、その音はプロでも、努力を重ねつくられた音でもないが、その音はこれからどのような未来を歩むのか、心を踊らせる唯一無二の音であった。