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非日常が少しある話  作者: aka
ゾロ目
6/11

ゾロ目の能力


公園につくまでの時間。

夕花さんが前を歩く。

ときどき振り向りかえるのは、着いてきているか確認しているのか。

それとも、緊張を誤魔化すためだろうか。


振り向いても話しかけてはこない。

すぐにおどけた笑顔で、前に向き直る


俺と八ヶ代も無言でついくが、リュックのガシャガシャとした音に助けられる。



「ついたね。」


公園に着き、3人はベンチに座る。

話の切り出し方に迷っていると、夕花さんが話し始めた。


「変だなと思ったのは、2年くらい前。

 1日に何回も、ゾロ目を見てることに気づいたんだ。」


そこからの話は、八ヶ代の体験と同じだった。

1日10回が20回になり30回になり...


しかし、夕花さんの能力は八ヶ代よりずっと早くに発現している。


「それで...その先はどうなるんだよ?」


我慢できずに、八ヶ代が質問する。


「ダイソー...じゃなくて、蒼がどうなるかわかんないけど...」


夕花さんの能力は、1日50回程度で成長が止まっているそうだ。


呼び捨てする仲を密かに嫉妬しながら、この能力について考えをめぐらせる。


「それで...

 ひとりで抱え込むのが怖くなって、動画を作ったんだ。

 まさか、蒼がひっかかるとは思わなかったけどね」


夕花さんは、困ったような、安心したような笑顔で、そう話した。



夕花さんが話し終わると、みんな考え込むように沈黙した。


「ふぅ...」


八ヶ代が安堵したようなため息で、沈黙を破る。


「なんだよ、心配して損した」


八ヶ代は、安心したように笑った。


「で、でも、この先のことは...」


「そんなの心配してもしょうがねぇだろ?

 そん時は俺がいる。

 大丈夫だよ。夕花。」


八ヶ代の言葉に安心したのか、夕花さんは泣き出した。

よほど不安だったのだろう。

八ヶ代に抱きつき、しばらく泣いていた。



ひとしきり泣き終わると笑顔を作り、俺たちに向き直った。


「私、すごく不安だったの。

 2人とも、本当にありがとう」


あまりの可愛さにキュンとしてしまった。

おそらく1:9くらいの比重だろうが、まぁいいかと思った。


あたりも暗くなってきたので、解散することにした。

この後の情報交換は、チャットグループを使うことになった。


「じゃあね!蒼!乙成くん!」


夕花さんの家は公園とは逆方向なので、ここで別れることになった。

送って行こうかと提案したが、すぐそこなのでと断られた。

駅に向かって歩く俺たちが見えなくなるまで、夕花さんは手を振ってくれた。



改札を抜けて、プラットフォームに着く。

電車が来るまでのわずかな時間。

到着を知らせるアナウンスが聞こえる。


疲れたからなのか、考え込んでいるのか、俺たちは黙っている。


「なぁ。」

「ん?」

「電車一本遅らすわ。」


だいたいの理由を察した俺は、分かったとだけ答えた。


俺の答えを聞いたのか聞いてないのか、八ヶ代は階段に向かって走りだした。


電車が来たので、俺ひとりで乗る。


(頑張れよ。)


おそらく成功するだろうが、友人の健闘を祈る。


電車にはまばらに人が乗っている。

しかし座れないほどではない。

前回と同じくリュックを抱えて、席に座る。


(はぁ〜、やっぱりラブコメかよ。)


呆れたような、嬉しいような気持ちで、俺は眠りについた。


でも、やっぱり悔しかったので、明日はしこたまからかってやろうと思った。




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