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初恋づくし  作者: しょぼん(´・ω・`)
第六章:夢の国には何がある?

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第一話:もうすぐゴールデンウィーク

 椿と皆が友達となり、二週間程過ぎた。


 毎朝、学校で萌絵、椿、日向ひなたあおいと顔を合わせ、楽しく話をする日々。

 それは諒にとって、未だ残る辛さ以上に、何処か楽しく新鮮な日々だった。


 中学時代も失恋以降、男友達とすら疎遠となり。

 高校に入っても、基本的に友達という者を作らなかった諒。

 あおいとはずっと親友だが、クラスも異なっていたため、日中に学校で誰かと話す事など、事務的な会話がたまにあっただけ。


 それが一転。

 毎日テレビやYourTubeの話題などで盛り上がる、萌絵や日向ひなた、椿やあおいの楽しげな会話を毎日のようにを聞き、皆の輪の中にいるのは、それだけでも本当に大きな環境の変化である。


 椿は今でもクラスで人気者ではあったが、できる限り諒達とあろうと席に留まり、できる限り共にあろうとした。

 クラスメイトにはとにかく羨ましがられたが、そこは日向ひなたが、


「やっぱり私、魅力あるからね~」


 などと強調し、諒達が責められるような空気を作らせない状況を生み出す。

 そんな彼女を見る度。


  ──ほんと、日向ひなたさんって凄いよな……。


 そのコミュニケーション能力の高さに驚かされ、同時に感謝を覚えるのだった。


*****


 そして、ある日の昼休み。


 諒、萌絵、あおい、椿、日向ひなたの五人は、席をくっつけ五人でそれぞれお弁当を広げ、昼食を取りながら楽しげに会話していると、ふと日向ひなたが少し控えめな声で、ある話題に触れた。


「そういえばさ~。みんなはゴールデンウィークに何か予定あるの?」

「私は特にないよ。椿さんはライブとかあるの?」

「五月の連休終盤にひとつ、呼ばれているライブがございますが、それ以外は特に」

「ライブの準備って忙しいんじゃない?」


 あおいが気になってそう尋ねると、彼女は笑顔で首を振る。


「数日前よりリハーサルはございますが、それ以外は主催ではないので特に。披露する歌も二、三曲ですし、歌は放課後などに家でレッスンしておりますから。ですので、四月末まではのんびりできるのですよ」

「家でもレッスンしてるって、やっぱりプロって違うよね~。諒君もそう思わない?」

「思う思う。椿さん本当に凄いね」

「そんなに褒めても何もございませんよ?」


 日向ひなたや諒の反応に、少し恥ずかしげに俯く彼女に、萌絵やあおいも微笑ましくなる。


「でも日向ひなた。どうしてそんな事聞いたの?」


 ふと会話のきっかけが気になり萌絵が尋ねると。


「いや、折角だしみんなでどこか遊びに行きたいなって。勿論妹ちゃんも誘って」


 彼女は楽しげな顔でそんな提案をする。


「ちなみに諒君とあおい君は予定とかあるの?」

「僕は諒とテニスでもしようって誘ってたけど、別に決まった予定はないかな。諒は?」

「俺もその誘い以外は予定もないし、後は適当に散歩でもしたりしようかなって思ってた位」


 日向ひなたの質問に、二人は自然とそう返していたが、そこできょとんとしたのは椿だった。


「散歩、でございますか?」

「うん。趣味が散歩でさ。何か年寄り臭いよね」


 諒の趣味を知らない彼女が首を傾げると、彼がそう返しながら、少し苦笑し頭を掻く。


「そんな事ないよ。この間だって、一緒に散歩したけど凄く楽しかったし」


 彼をフォローするようにそう口にした萌絵だったが、それを見てにんまりしたのは日向ひなただ。


「そうだよね~。だってさ」


 そこまで言うと、彼女は周囲に聞こえないよう、椿の耳元で囁いた。


「諒君と散歩してたらお泊りしちゃった位なんだよ?」

「え!?」


 対照的な大きめの驚き声をあげた椿は思わず口に手を当て目を丸くする。

 勿論内心は、


  ──お、お二人は既に、そのような仲なのですか!?


 という衝撃だったのだが。

 露骨過ぎる反応は、一気に萌絵や諒にもその意図を強く感じ取らせ。


「そ、その! たまたまそういう機会があっただけで、その日はずっと話をしてただけだし。ね? 萌絵さん?」

「そ、そうだよ。それ以上の事なんて何もないの。本当に友達だから!」


 と、これまた露骨に恥ずかしさを全力に出しすぎた、しかし周囲に気取られないよう控えめな声で反応する諒と萌絵の反応を見て、椿は暫し混乱することになるのだった。


「まあまあ。それで日向ひなたさん。どこか行くって何か充てがあるの?」

「うん! 折角だし、みんなで遊園地行かない?」

「遊園地?」


 諒の言葉に、彼女は満面の笑みを見せた。


「そうそう。折角友達になったんだし、こういう時こそ皆で一緒に楽しんで、より仲良くなりたいな~って」

「素敵ですね。わたくし、今までお友達とそのような場所に行ったことがないのです」


 日向ひなたの意見に目を輝かせたのは、意外にも椿だった。


「それなら尚の事いいアイデアだよね? みんなはどう?」

「僕は構わないよ。萌絵さんは?」

「私も別に構わないけど。諒君は?」

「今日帰ったら香純かすみに聞いてみるよ。あいつが問題なければ、俺も別に」

「じゃ、ほぼ決まりね! 日取りとかはこっちで決めるから、諒君は念の為妹ちゃんに話をしておいてね」

「うん。わかった」


 特に誰からも否定的な言葉がなかったのを確認した日向ひなたは、満足そうに頷くと、次に諒の方を見ると、突然こんな話をし始めた。


「ちなみにだけど。諒君って今日の放課後は暇?」

「え? あ、うん。特に予定はないけど」


 突然会話を振られ、思わず首を傾げた諒に、日向ひなたはにんまりとする。


「この間の話、覚えてる?」

「この間の?」

「うん。感謝のために奢ってくれるって話」

「え? ……あ」


 諒は、椿との再会ですっかり忘れていたある話を思い出した。


 新学期初日の朝、確かに口にしていた。

 朝から機転を利かせ、諒達と友達になり一緒にいてくれ、更に諒と萌絵が変な噂が立たないようフォローしてくれた彼女に感謝した時。


  ──「だって友達だからね。まあそれでも感謝してくれるなら、今度何か奢って貰おうかな?」


 という冗談じみた言葉に、


  ──「うん。高いのは難しいけど、その内何かご馳走するよ」


 と返していたの事を。


「思い出した?」


 じーっと見つめてくる日向ひなたに、諒は笑う。


「うん。お礼、今日がいい?」

「できればそうしてほし~な~」

「え? 日向ひなた。あれ本気だったの?」


 どこかおねだりするような口調の日向ひなたに、思わず萌絵が驚きを示すと、彼女は堂々と「勿論!」と返す。


「お礼、ですか?」

「うん。椿さんが転校してきた日に、教室入ってくる前に色々あってね~。じゃ、今日の放課後。空けておいてくれる?」

「あ、うん。構わないよ」


 日向ひなたの問い掛けに、特に嫌がる様子も見せず、諒は自然に頷く。

 だが、何処か諒と日向ひなたを二人っきりにするのを気にしたのは萌絵だった。


  ──また諒君に酷い事、言い出さないよね?


 過去に何度か諒に酷い事を言ったり、それこそ椿の一件でもかなり彼に無理強いをしたイメージが拭えぬ彼女は、心に少し不安がもたげる。


「ねえ。私も一緒に行ってもいい?」


 だからこそそう尋ねたのだが。


「だめ~! 今日は私が諒君を独り占めするの。大丈夫、悪いようにはしないしさ」


 珍しく日向ひなたはそれをすぐに否定すると、悪びれない顔で萌絵にウィンクする。


「そうなのですか? 折角でしたらわたくしもご一緒したかったのですが」

「ごめんね~。今日は奢って貰っちゃう話だから、皆がいると、折角の諒君の厚意にも『気を遣わせるでしょ』って、有耶無耶うやむやにされちゃいそうだし」

「別にそれでも良いじゃない。友達なんだし」

「友達だからこそ、そういう所はしっかりしないとダメなの」


 椿の申し出すらも断り、珍しくかたくなな日向ひなた


  ──普段なら、皆で一緒に行こうとか言いそうだけど……。


 予想外の態度に萌絵が少し怪訝な顔をしてしまうも。


みんなごめんね。でも、遊園地の件もあるし。それにもし時間合うなら、明日以降に皆で一緒に食べに行こう?」


 諒が彼女やどこか残念そうな椿に笑顔でそんなフォローをしてしまえば、無理強いもできるわけがない。


「それはいいね。みんなは明日以降で都合が悪い日あるかな?」

「明日なら大丈夫ですが」

「私も大丈夫だよ」

「俺も大丈夫」

「じゃあ明日は皆で行こ? 今日は私のわがまま聞いてもらっちゃうけどごめんね!」


 あおいの質問に全員が了承すると、あまり済まなそうには見えない笑顔で日向ひなたが謝罪する。

 そんな彼女に思わず呆れる萌絵と、彼女達を見てくすりと笑う椿とあおい

 そんな何処か仲が良い友達の会話を、諒もほっとしながら見守っていた。


「じゃ、諒君。帰りは付き合いよろしく~」


 そんな中。

 日向ひなたは笑顔でそう口にすると、弁当のウィンナーをパクリと口に放り込み、美味しそうに食べ始めるのだった。

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